35章 ページ38
屯所に帰ると、既にAは俺の部屋で寝入っていた。
いつも通りの狼姿で、俺の布団の脇に沿うように。
俺が居ねー時までそうする義理はねー筈なのに、律儀な奴だ。
「……バカな奴」
ポツリと呟いて、俺もいつも通り布団に寝転がって奴の毛皮に顔を埋める。
元が人型だからか、獣のくせに獣臭さは一切感じねェ。
だからこそこんな風に枕にできるわけだが。
寧ろ獣臭よりも、何か花みてーな良い香りがする。
シャンプーや石鹸とも違う、ほんのり甘くて心地いい香り。
そーいや人型の時もこんな匂いしてたっけ、なんてことを思い出した途端、自分が変態じみてるように感じて妙に嫌気が差した。
よくよく考えてみりゃ、獣の姿をしちゃあいるがこいつもれっきとした女だ。
今更感は否めねーが、普通はこんな風に野郎と同室で堂々と並んで寝たりするモンじゃねーだろう。
そういう風な対象として見られてねーことが明らかな現状に辟易する。
「…いや、これで良いのか」
そうだ、この状況を俺は望んでた筈じゃねーか。
Aのことを想うなら、俺のことをそういう対象と思わせちゃいけねェ。
こいつが故郷に帰る妨げになっちゃいけねーんだ。
…そう、わかってる筈なのに。
「あー…ダメだ、こりゃ」
頭で解ってても、心はそれについていかない。
Aに俺を好いて欲しい、俺のモンになって欲しいと叫んで聞かねェ。
もしこいつが地球に住む人間だったなら、こんな苦しい思いはしなくて済んだんだろうか。
もしこいつが故郷に帰りてェと願ってなければ、何も気にせず俺のモノにできたんだろうか。
ありもしねーたられば論の幻想ばかり並べ立てて、現実から目を背ける。
何だって、恋っつーのはこんなに苦しいモンなんだ。
伝えたくとも伝えられねー行き場のないこの感情は、俺の想いはどうしたら良い?
「…責任取りやがれ、馬鹿女…」
相手が眠ってて聞こえねーのをいいことに、俺は心の内に抱えきれねー理不尽をそいつの前で吐き出した。
〜沖田 Side END〜
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影咲 遥(プロフ) - 夜空 星月さん» 星月様、初めまして！コメントを頂きありがとうございます。多分シャボン玉よりもグダる可能性大ですが、頑張って更新していきますね！応援ありがとうございました。 (2018年1月27日 22時) (
レス) id: 6088c20e27 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 星月(プロフ) - 【シャボン玉に乗せた恋心】のときからファンです！こちらの作品も応援してます！頑張ってください！！ (2018年1月27日 22時) (レス) id: 5d15086cca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：影咲 遥 | 作成日時：2018年1月27日 21時
