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朝5時、起こしに行けばよく眠れなかったのか睡眠時間が短かったのか、殺人犯のような形相で起床した神谷だったが、スーツを身に纏う頃にはきっちりお仕事モードの神谷だった。しかし大きな事件と言えど、そろそろ休んで欲しいくらいだ。それは本人が一番思っているのかもしれないけれど。
行ってくる、と言って部屋を出ていこうとした神谷に敬礼をすれば、それをまじまじと見て彼は言った。
「朝から失礼な人ですね」
あ、そうか。手が逆だった。
慌てて左手から右手に変えたが、伸びてきた神谷の手に掴まれる。
「腕が曲がってる、伸ばして。もっと肩を落として。顔はもう少し上げて下さい」
神谷の几帳面さにより、あれこれ指示が飛び所々直される。まさか指導されるとは思わなかった。されるがままに敬礼を直せば、一つ頷く神谷。
「少しはマシになりました」
「……精進します」
神谷は呆れたようにちょっと笑って、再び行ってくると言って出て行った。足音が遠ざかり聞こえなくなったところで言われた通りにチェーンを掛ける。
リビングに戻れば付けたままだったテレビがストーカー殺人事件のことを報道していて、ただなんとなく、神谷が今日も何事も無ければいいと考えた。
一介の刑事が殉職する確率なんて、そう高いものじゃないかもしれないけれど。
なんとなく窓の外を見る。ちょうど神谷の車が坂を上がって行くのが見えて、小さく手を振った。
ちゃんと、帰ってきて欲しいなんて、
なんておこがましい願いだ。
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美桜(プロフ) - 続きがとても楽しみです!^^* (2023年1月26日 11時) (レス) @page16 id: 3c71fa7893 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 12話に誤字がありました。「操作資料」ではなく、「捜査資料」です。 (2019年9月22日 22時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:依香 | 作成日時:2019年9月15日 3時