真っ白で真っ赤な其の手で【文スト】

手紙が示すもの ページ16

｢……此れは…。｣

そう云って太宰が拾ったのは宛名の無い手紙。真っ白な封筒にちょこんと付けられた赤い封蝋。如何やらまだ誰も開けていない様である。

送り主の名前は…

｢上弦A…｣

｢……太宰さん、何ですか其れは…？

―――ッ!!｣

｢あ、オイ人虎ッ！｣

虎の回復力でもう全快した敦は太宰の手にある手紙を見、負傷した芥川を背負う中也の制止も聞かずパッと其の手から手紙を奪い取る。

そして一気に封筒を開けた。

｢此れは…｣

拝啓

一体今の季節は何なのでしょうか。この手紙が読まれているという事は、私は捕まったのでしょうか。それとも、他に何かが有ったのでしょうか。

何れにしても、この手紙を読んでいる誰か。もし私が軍警に捕まったとか、そうでは無く、不自然に消えたとしてもどうかお気にとめないでは呉れませんか。

きっと何か、一寸した面倒に巻き込まれているだけでしょうから。

自分の失態は自分で何とかしますから。貴方様にはなるべく御迷惑をお掛けしたくない。私はもう既に何十人かの警察官を殺めてしまいました。

私は事が済んだら自決をするつもりで御座います。

_____其れでも、私の事で何か聞きたいことがあるのであれば、同封されております紙切れに書いてある場所を当たって下さい。きっと、私にも判らない事が、きっとお判りになられますので。

但し、如何なるかは私も判りかねます。お気をつけて。

敬具 上弦A

｢紙切れ…紙切れって…｣

｢敦くん、落ち着いて…｣

敦は必死に封筒の中を探し、小さな、本当に小さな紙切れを其の手に取った。
敦は割れ物を扱うかの様に其の紙切れを覗き、何か吹っ切れた様な顔で其の場に居る全員に告げた。

｢マフィアとか探偵社とか…、一旦置いて下さい。今一番やらなければいけない事は、Aちゃんを探し、奪還する事です。貴方たちにも損は無いはずだ。

第一今は休戦中ですし。どうですか、中原中也さん。｣

｢そうだね。……中也。｣

名指しで呼ばれた中也はぴくりと眉を動かす。少しの間ピリッとした空気が流れるが其れも直ぐに終わった。

｢……。はァ。その通りだ。今は手前らと揉めてる場合じゃねェしな。
うし、其の紙切れにはなンて書いてあんだ？｣

そう云って紙切れを覗き込む。其処には…。

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