当主代理 ページ12
「こんにちは、派遣のメイド、クロエだ。
お前の妹と挨拶に来てやったぞ。
まぁ敬っても良いぞ、許可してやる。」
わざと大きな態度を取る。
ステラは臨時体制で私を睨んだ。
だって、こいつはアシュリーじゃない。
背もアシュリーより低い…髪と目の色も似てるけど違う…顔つきが物語ってる…。
だから試してやろうって思ったの。
力量を見極めるわ。
「それは、遠いシェルシー国からありがとうございます。私は当主代理のメルフィスと申します。
私とはどうぞ、メイドと当主という立場を気にせずお気軽に話しかけてくださって構いません。
……そして、ステラ。大きくなったね。
うまく行ってるみたいでお姉ちゃん安心しましたよ」
驚いた事にメルフィスはゆったりとした口調で対応した。ふん、心が読めないな。
「ね、姉さん！た…ただいま！」
「うん、おかえり、ステラ」
ブロンドの髪を腰まで下ろし、優しげなペリドット色の瞳で私を見つめる。
白と青を基調としたアシュリーの制服なのだろう、瞳の色に似合っていない。
「そしてクロエさん。こちらへ来てください」
椅子を立ち、彼女は私を手招いた。
小細工か？私にそんな弱者の真似が通ると思うなよ
私は断る事なくついていく。
すると姫は不安そうに私の裾をつかんだ。
「姫…」
「……お気をつけて。あの人、苦手なの」
姫はメルフィスと会ったのだろうか
今はそんな事どうとでも、と私は手を振り払い、歩みを進めた
かたん、重い木製のドアが閉じられる。
「アシュリー姉さんが病とはどういうおつもりでしょうか。侵入者ならば即刻切り捨てます。
アシュリー姉さんは健康そのものです。」
瞬時に構えられる剣は私の喉元へ行きたそうにしている。
だから、虐めたくなっちゃった。
「あんた、アシュリーと血が繋がってないだろ。
分かるんだよ、そういうの。
ねぇ、あんたって何？何なの？」
メルフィスの剣は私の腕を切り落とした。
すぐに再生する。
だってあの夜にいたのはアシュリー、ルアラリエ、ステラだけだった。
ステラより歳が上なメルフィスはなぜあの場に居なかった？
「私の質問にお答えください。」
動じず、そのまま。
「そのまんま。あんたの目は節穴ってだけだね」
くるんと視界が暗転した。
あー、仕掛け部屋だったのか。そんな事しても無駄なのに。
馬鹿だなぁ。
厄介なお城に入ったなぁ。
あぁ、もう。
みんな無駄ばっかりね。
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作者名：蜂蜜流星群 | 作成日時：2020年8月1日 10時
