One more time③【赤井秀一】 (ページ36)

今日:20 hit、昨日:38 hit、合計:56,846 hit

126 ページ36

.

一瞬、時間が止まったようだった

この状況を理解するのには数秒かかった

ハッと我に返った時、1番初めに目に入ったのは綺麗な夜景

『…あ、えっと…』

慌てて取り繕うがもちろんできっこない

こんなに唐突に好きだと言われたのは初めてで

気持ちが全然落ち着かないし

「…A」

名前を呼ばれたのに顔もまともに見れない

「A、」

私の名前を呼ぶ声好きだなぁなんて

今はそんなこと考えるんじゃなくて…

「こっちを見ろ、A。」

秀一の右手が私の頬をすくい上げ、無理矢理彼の方を向かされた

「少し話を聞け…。」

真剣な眼差しが私を穿く

秀一に体全部が吸い込まれそう…

そして秀一は静かに話し始めた

「5年前、あの日ここで別れを告げた時は正直堪えたよ。
潜入捜査の為だとは言っても、お前の気持ちを考えては決断を躊躇してしまいそうでな…。
さすがに待っていてくれとは言えなかった。
その言葉は余計に待ちぼうけを食らわせてしまう、そう思ったんだ。」

『…そんなこと言われなくても待ってた…。』

小さく呟けば、秀一の冷えた親指がそっと私の頬を撫でた

それだけの事なのに胸がぐっと押しつぶされそう

「こんな俺を待っていてくれてありがとな…。」

あぁもう、そんな顔しないで…

こんな俺って何よ、、あなただから、秀一だから忘れられなかったんじゃない…

「俺が潜入捜査している時…彼女と交際していた頃は色んな事があったんだ。
感じること、思うことが沢山あった。彼女から学んだことは数え切れないほどある。」

『うん…』

本当にそうなんだと思う

明美さんはきっと秀一に、私には教えられないものを沢山教えてくれた

秀一は明美さんのそういう所に惹かれるものがあったのかもしれない

「彼女との時間は間違いなく、俺のFBIとしての信念や士気を高めた。
そして彼女の死は…大切な人を失うという怖さを俺に教えた…。」

。