One more time③【赤井秀一】 (ページ28)

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「結論から言ってしまえば、俺は二人の女を同時に愛した下衆な男…
自分がどうしたいのか、どうすべきなのかまるで見失ってしまった。」

煙草の火を消しながらシュウは呟いた

今までこんなシュウを誰が見たと言うのか…

「やめてよシュウ…誰もあなたをそんな風には思っていないわ。
あなたがAと別れて明美さんと付き合ったことは何も間違っていなかった、そうでしょう？」

「…」

何も答えないシュウに私は続けた

「あなたの話を聞く限り、今のあなたはAと明美さんどちらに対しても罪悪感や申し訳ない気持ちがあって身動きが取れない状態ね。
でもシュウ…そろそろ自分の気持ちに素直になってみてもいいんじゃない？」

私が思ったことを伝えると

シュウはしばらく黙ってこう放った

「…怖いんだ。」

「……怖いって…一体何が…？」

「…大事にした人を失うのが怖い。
ただでさえ、俺たちは仕事上いつ死ぬかわからない。
今よりもっと大事にして、彼女を失ってしまえばあらゆる私情が俺を襲ってくるだろう…もうそんな思いをするのは御免なんだ。」

感情を表に出さないせいで気付かなかった彼の本音

そんなことを考えていたんだと意外に思った…

でもね、シュウ…

「それは違うわ…。」

「…？」

そう、違うのよ

Aと同様幼い頃に両親を亡くした私はこう思う

「失いたくない、そう思うなら…離してちゃだめよ。
そういう存在の人こそ手掴んでいなきゃ。
あなたは明美さんのこと、ちゃんと胸に刻んで前に進むべきよ。
明美さんだってきっとそう望んでいると思うわ…。」

Aは、シュウには明美さんを思い続けてほしいって言ってた

もちろんその思いは大切だし、決して忘れてはいけない人

だけどシュウとA、二人には絶対に後悔して欲しくない

二人を一番近くで見てきた私だからこそそう思った

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