One more time③【赤井秀一】 (ページ25)

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シュウはしばらく考えた後落ち着いた口調でこう呟いた

「…さぁな。」

「…え？」

返ってきたのは質問の答えではなかった

「さぁなって…」

「…分からないんだ。」

そう言うシュウの目はまるで、宛もなく彷徨っている旅人のよう

こんなシュウはあまり見たことがない

「考えれば考えるほど分からなくなる…。
この気持ちを例えるなら…絡まって中々解けない糸。
今俺の中には2つの長い糸があって、それが簡単には解けなくてな…。」

解けない2本の糸…

きっと彼は今、矛盾した気持ちで悩んでいるに違いない

そうなれば私は…

「わかったわ、シュウ。」

「…？」

「その絡んでしまっている糸、私が必ず解くわ。
あなたがどちらかを切らなくてもいいように…。」

そう、解けないその糸を

彼が切って中途半端にしてしまわないようにね。

〝仲間〟なんだもの

これくらいするのが当然でしょう？

シュウは横で頼りになるな、と笑った

「…少しばかり長くなるが、、」

「No problem…問題ないわ。」

そしてそのままシュウはハンドルを握りしめ、真っ直ぐ前を見つめながら話し始めた

「…あいつは強がるわりに、かなり涙脆い。
ジョディもよく知っているだろう。」

「えぇ、もちろん。」

知ってるわ…ずっと昔から

クールで落ち着いていて、しっかりしているように見えるけれど

本当の、奥の方にいるAはとても繊細で、どこか儚い

「あいつは泣くことはダメなんだと思い込んでる…決して悪いことではないんだがな。」

「…そうね。」

「思うんだ…。
あいつには、ちゃんと自分の感情をさらけ出せる場が必要なんじゃないかと。
だから俺は…その場所を作ってやりたいと思ってる。
Aが我慢して、自分で自分を苦しめてしまわないように…。」

「シュウ…」

あまり考えてなさそうでぶっきらぼうな彼が

実は人一倍Aことを考えているということがよく分かった瞬間だった

Aが弱音を吐ける、そんな場所を作ってやりたい＿＿＿

シュウらしいような、らしくないような…

どちらにせよ、これは一種の〝愛情〟だと私は思った

。