1《キセキのはじまり》-1 ページ1
その日は暑かった。
照りつける太陽の真下でエアポートをする新人をただ部屋で眺めている。
部屋は冷房が効いていて涼しかったが窓枠の向こうの暑苦しさが脳内に直接響いてくるようだった。
「暑い…」
心の中だけで幾度も重ねたその言葉はついに自覚もなく飛び出していた。
「さっきから暑っつい、暑っついうるせぇぞ。つーか、ここ室内だからな。十分涼しいぞ。」
そう声をかけるのは私の上官であり班長の進藤誠だ。
「分かってます。でもアレ見てたら誰でも暑いって言いたくなりますよ。」
まだ4月なのに7月並みの暑さの中、重さ4・4kgもある小銃を抱えて走る新隊員。
「お前はあの訓練をやってないから暑いって言えるんだよ。俺らからしたら暑さなんて感じねぇよ。」
それは秘密でしょ。聞こえないようにツッコミを入れる。
しんさんは私が黙っているのをいいことに得意げに話し始めた。
「新人の頃はなぁ、あんなの暑いどころじゃねえぞ。焼肉だぜ、焼肉。あの頃は、昼飯まで生きるのが精一杯でよ…」
始まった…最近はもうおっさんになり始めたしんさん。
何かある事にペラペラと。まぁスイッチがまだ正常だからいいけどね。
なんか知らないけどお仕事になるとやる気が出るのか、カッコいいんだよね。
なんだかんだ4年も一緒にいると、年の離れた兄弟だと感じる。
「おい、聞いてんのか?」
おっと。まずい…説教タイムの始まりか?
と焦っていると
「まあいいや。そう言えば隊長が呼んでたぞ。
昼飯時までにこいだってよ。」
「何の話ですか?」
「多分新人のヤツか、班変更だろ。」
班変更か。1年でこの班が終わりは少し寂しいな。としみじみ思いながら適当に返事をする。
「両方だったら泣きますね。慰め用のお菓子期待してますよ。」
帰ってきたのは以外な返事だった。
「バカ、早く行け。」
もうちょっと面白い返事がよかったです。と告げ部屋をあとにする。
廊下は少し暑かったが外に比べたらまだまだ涼しかった。
私は基地司令室へと向かって歩いた。
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norio117(プロフ) - オリフラ外そうね (2018年7月20日 19時) (レス) id: bd732d3351 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rabbit翼0819 | 作成日時:2018年7月20日 19時