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・たまにはね。 T ページ2

季節はもう冬になり始め、コートが手放せない時期になった。

撮影が終わり、帰っている途中、小さなケーキ屋さんが目に入った。最近は仕事が忙しくて、しばらく甘いものなんて食べてなかったかもな。

たまにはケーキ屋さんにでも行ってみてもいいかもしれない。気づけば足がそのお店へと向かっていた。

「いらっしゃいませー」
そこは若い女性がひとりだった。

「このお店でおすすめってありますか?」
「でしたらこのフルーツタルトがおすすめですよ!」
「じゃあそれふたつください」
「ありがとうございます!」

帰り際に店員さんから
「ありがとうございましたー!今日は寒いので暖かくしてくださいね」て言われた。

たまには寄り道するのもいいかもしれない。

家に帰ればAがいる。案の定、Aは晩ごはんを作って待っていてくれた。

「ただいま」
「おかえりなさ〜い」
「今日ケーキ買ってきた」
「え、ほんと!?すっごい嬉しい!!」

彼女は目をキラキラさせてケーキの箱を見ている。
それが嬉しくて、俺も頬が緩んだ。

晩ごはんはすごく暖かくて、すごくおいしかった。

「次は待ちに待ったフルーツタルトですよ〜」
「わくわくしてます!…うわぁ!美味しそうだね!」

フルーツタルトは宝石のようにキラキラしてAみたいだなと思った。もちろんおいしかったけど、Aの反応を見るだけで俺は満足していたのかもしれない。

Aはお皿を洗いながら、思い出したように言った。
「なんで今日はケーキ屋さんに寄り道してたの?」
「たまには寄り道しよ〜て思って」
「裕太らしい(笑)」

「あと、Aが喜ぶかな〜て思って」
「うわぁ嬉しい」

片付けを終えたAは俺のひざの上に座ってきた。いつもはちがうのに。
「……じゃあ、私もたまには裕太に甘えてみる」

なんてかわいいんだこの生き物
やっぱりタルト買ってきてよかったな。Aが喜ぶなら毎日。

「たまには、ね」
「ふふっ、たまには、こんなのもいいね」
「A、たまには、じゃなくて、いつでも甘えていいんだけどな〜」

頭を撫でながら言うと、Aは照れるから無理だと言った。こんなAが見られて嬉しい。
満足感でいっぱいになった。

たまには、ちがうことをしてみるのも悪くないな
そう思った。

・不安な夜 T→←・今夜だけは素直に 2



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作者名:塩レモン | 作成日時:2021年8月7日 23時

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