【utit】自 作 自 演 の キ ス 魔 、 ま ふ ま ふ【mfmf】

その後番外編:茶の彼　天月 ページ33

付き合っているという報告を聞いてから、何回か二人で遊びに来ることが増えた。
嬉しいが、少し複雑な気持ちがするのは、まだ恋心を捨てきれていないからなのだろうか。

「月斗。月斗は好きな人いないの？」

『えー、いない･･･かな？』

「嘘。僕知ってますよ、天月君の好きな人」

『えっ･･･え？』

僕が驚いて固まっているのを見たまふ君は、悪戯っ子のように笑った。
僕に近付くと、まふ君は僕の耳元に口を寄せた。

「天月君の好きな人、Aでしょ？」

その囁きに、ひゅっと息が詰まる。
目を見開いたあと、ニコニコと笑顔を見せているまふ君をじっと見つめる。

『あの･･･いつから？』

まふ君は顎に手を当てると、考える素振りを見せた。
いつから気付いていたかによっては、僕のバレないようにしようという努力が色々と無に帰りそうだが･･･

「･･･初めて会わせた時･･･いや、天月君がAと目を合わせてた時から？」

『めっちゃ初っ端だった！！』

最初から気づかれていた恥ずかしさにまふ君から顔を逸らした。
たしかにAに一目惚れだったけど、まさか知ってるとは･･･
え、僕そんな分かりやすい･･･？

「で？言わないの？」

『･･････困らせるだけだし･･･それに、Aとまふ君が幸せそうなら、それでいいから』

友達の幸せそうな顔を見るほどの幸せはないから。
それが好きな人ならば、尚更のこと･･･
まふ君は少し目を見開いたあと、困ったように眉を下げて笑った。

「･･･優しいね、天月君は」

「え？なになに、一人だけ何も聞いてないんだけど。情報交換は？」

話についていけないのか困惑しているA。
僕とまふ君は顔を見合わせると、またAへと視線を戻した。

「ふふ、男だけの秘密！」

「なにそれ」

『･･･そうだね、内緒』

「月斗まで！？」

驚いたような声を出したあと、自分だけ知らないことに拗ねたのか、頬を膨らませるA。
きっと、いや、絶対に言えない。
この想いは、Aに好きな人がいると知った時点で蓋をした。
ねぇA、好きだよ、大好きだ。
だから、どうか、幸せになって欲しい。
君が笑顔なら、君が笑うなら、ずっと親友としていられるなら･･･
僕はそれでいいんだ。

その後番外編:グレーの彼→←その後番外編:青の彼

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す