春よ、終わらないで (ページ6)

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『うわっ！もう、こんな時間！』

気づけば高く昇っていたお日様は沈みかけ、あたりはオレンジ色に染まっていた。俺達もそろそろ帰ることにした。

「大ちゃん、暇になったらまた来てね」

『うん、暇じゃなくても来るよ』

俺の言葉にキミは嬉しそうに微笑むと隣においてあった車イスにゆっくりと乗り移った。

『ひとりで帰るの？』

「うん、｣

車イスで来るのはとても困難だと思えた。だって、あのけもの道だよ？

『…送ってく』

キミは大丈夫だよと遠慮がちに言うから。やっぱ、言い方変える。

『いっしょに帰ろ』

そして俺はキミの隣を歩き始めた。本当は今歩いている方向とは別の方向に俺の家はあるけど、たまには遠回りするのも悪くない。

「あ、ここ俺のうち｣

『うおっ、でか』

突然いのちゃんが足をとめ指した方向を見れば、そこには大きなお屋敷が建っていた。到底俺の家とは比べ物にならない大きさで見た目も豪華だった。

いのちゃんが家の扉を開けるとパタパタと1人の女性が中から出てきた。

「佐藤さんただいま」

「お帰りなさい、慧さん。あら、お友達ですか？」

佐藤さんとよばれたその女性は興味津々に俺を見てきた。

「うん。大ちゃんだよ。いっしょに帰ってきたんだ」

改めて自己紹介すると佐藤さんはニコニコと嬉しそうに笑った。

「私はこのお家で家政婦として働かせてもらっています、佐藤と言います。慧さん、あんまりお友達がいないから…大貴さんがお友達になってくれて嬉しいです」

キミは俺にも友だちくらいいるからって反論してるけど、佐藤さんはクスクスと笑って受け流す。なんだか、本当の家族みたいだった。

『それじゃ、俺は帰ります』

キミを送り届けたらから俺も暗くなる前に帰ることにした。また、キミと会えることを願って…

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