六十八 ページ23
Aside
「…A」
大好きな優しい声で目を開ける。
紅葉「元気にしてた?A」
『お母…さん?』
死んだ筈の母親が目の前にいて、微笑んでいる。
自分も死んだのだと思わずにはいられなかった。
天国なんてものがあるとは思っていなかったが、こんな不可解な状況に陥っているのだから“天国はあったのだ”と思う他ない。
『お母さん…ごめんなさい』
私の謝罪に恐らく母であろう目の前の人物は首を傾げる。
紅葉「なんで謝るの?A何も悪いことしてないのに」
『だってお母さんの最期…看取れなかった。お母さんが辛い時に気付けなかった』
彼女は言葉を失ったように2、3度瞬きをして、そして笑った。
紅葉「なんだ、そんなことか」
『そ、そんなことって…!』
私はそのことを後悔して恵の前で大号泣したというのに、母は目尻に涙をためて笑っている。
紅葉「ごめんごめん。でもね、私のことは気にしないで。後悔のない最期だったから。寧ろ私にとってはご褒美的な?」
母はその時のことを思い出したのか幸せそうに微笑む。
紅葉「それよりAはこれでいいの?」
『へ?』
紅葉「あんなやられ方して悔いはない?ムカつかない?」
母の問いに首を横に振る。
『悔いもあるし、ムカつく』
5対1という時点で卑怯だったというのに、私が動揺した瞬間に背後から刺すというやられ方をしたのだから、悔いを残すな、ムカつくなという方が無理だった。
紅葉「じゃあやり返さなきゃ。緋の術師の家系を怒らせたらどうなるか見せてやってよ、A」
『でも私もう死んだんじゃ…』
紅葉「…Aはまだ死んでない。貴方のことを大切に想ってる人が助けてくれた。だから早く目を覚まして、ありがとうってちゃんと伝えなさい。もう後悔しないようにね」
そういう母の姿は少しずつ薄れていく。
『お母さん。私まだお母さんに伝えなきゃいけないことあるの』
紅葉「ん?」
母は優しく聞き返してくれる。
『…私のこと想ってくれて、大事だって言ってくれてありがとう。大好き』
紅葉「…うん。私も大好きよ」
消えるその瞬間まで母は笑顔を浮かべていた。
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よっちゃん - すきすぎたやばいですね。。。。。。別の作品も頑張ってください (2021年2月6日 3時) (レス) id: 7291101692 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - レネットさん» コメントありがとうございます!アリスのことを好きになっていただけて作者は嬉しいです…レネットさんの心を満たせるような小説を書けていたなら心から良かったと思います(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2021年1月6日 11時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
レネット(プロフ) - 最初読んだとき、アリスちゃん嫌な奴だな…と思ってたけど最後まで読んだらアリスちゃんを好きになっしまった…。そして七海のハンカチを差し出すという紳士的な振る舞いがカッコよすぎて心が満たされました。面白かったです。ありがとうございます。 (2020年12月31日 23時) (レス) id: ec8ec8961f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - ccndayoさん» コメントありがとうございます…!とても嬉しいです。ccndayoさんの好みに合う小説を書けていたなら、良かったです(^^)こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2020年12月28日 12時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
ccndayo(プロフ) - 読ませて頂きました。もうホントに素敵すぎて途中途中感情移入しちゃって涙が出ました。小説も夢小説もたくさん読んできましたが私のどタイプな内容でした…。素敵な作品をありがとうございます (2020年12月27日 22時) (レス) id: 625a5cfc03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年12月1日 16時