緋色の契り【呪術廻戦】

八 ページ9

1人五条家の客室に取り残された私は、動くこともできず先程の悟君の言葉を頭の中でリピート再生していた。





五条(そういうのウザい。…さっさと帰れよ、雑魚共)





彼と一瞬目が合った。



けれど私を見る目は酷く冷たかった。



私は彼に何かした？



少なくとも昨日、別れるまでは普通だったはずなのに。



分からない。



そんな私の気持ちなどお構い無しに客室の襖が開いて、姿を現したのは私をここに連れてきた男。



彼の顔は誰が見ても分かるほど青褪めていた。





男「何をしている！お前もさっさと五条様に謝ってこい！！」





乱暴に服を掴まれて、無理矢理立たされる。



何を謝ればいいのかと問う前に、私は客室の外に放り出されていた。



状況の整理が出来ていないまま、知らない五条家の敷地内をとぼとぼ歩く。



悟君を見つけたのは暫く彷徨った後だった。





『悟…君』





同じ背丈くらいの後ろ姿に声を掛ける。





五条「…気安く呼ぶな、雑魚」





その声はどこまでも冷たくて。



初めて会った時よりも容赦のない彼の態度に何故か泣きそうになってしまう。





『私…何かした…？』





知りたい。



彼に何かしてしまったのなら謝って、昨日までのような関係に戻りたい。





五条「目障りなんだよ。お前みたいな雑魚が俺の役に立つ訳ねーだろ」





目障りと言うくせに彼は私の方を見てはいなかった。





『…あ……え…』





言葉にしないといけないのに。



なのに出てくるのは嗚咽する声に近いものばかり。





五条「…さっさと失せろ。2度と俺の前に現れんな」





その時、私は初めて泣いた。



悟君は私を迷惑そうに見た後、さっさと何処かに行ってしまって。



取り残された私が蒼社の男に見つけられたのは、それから1時間後のことだった。





『………』





あの日以降、悟君が蒼社の屋敷に来ることはなくなった。



当たり前といえば当たり前なんだけど。



楽しいと思えることも格段に減った。



五条に心酔した蒼社の人間は、悟君に拒絶された私を蒼社家の恥晒しだと、生きる価値がないと罵った。



最初は苛ついていた私も13になる頃には罵倒の類に慣れてしまった。



こんな家に生まれたくなかった。

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