七 ページ8
『お母さん、行ってきます』
余所行きの服に身を包み、見送りに来ていた母にそう告げて蒼社の屋敷を出た。
今から行くのは五条様のいる場所…つまりは五条家の屋敷。
男「くれぐれも無礼な振る舞いをするなよ」
隣を歩く遠い血縁の男はさっきからずっと同じことを繰り返し言っている。
これでも幼い頃から色々なことを学んできた身だ。
何度も言われなくても理解している。
『……嫌…だな』
本当に小さな声で呟いた。
1年前なら抱かなかったであろうこの感情。
顔も見たことない、どんな人かも知らない。
そんな人の為に、悟君と会えるはずだった時間を使うのは嫌。
でも小さな私がそんな我が儘を言ったところでどうにもならないことも分かっていた。
ここ最近ようやく分かったのは、私が望んでいないことでも、蒼社の人間は五条様の為なら無理矢理でもさせるということ。
結局私は人形と変わらない。
なんなら疑問や嫌悪を抱いていなかった以前の方が良かったのかもしれない。
男「着いたぞ」
その言葉を合図に顔を上げれば、蒼社のものとは比べ物にならないほど豪勢な屋敷が佇んでいた。
『ここが…五条家…』
私が呆気に取られている間に男は五条家の人と話を進め、私達は沢山あるであろう客室の一部屋に案内された。
蒼社家で事前に言われていた通り、誰に見られても構わないよう姿勢を正す。
“彼”が部屋に入ってきたのは、私達がこの部屋に通されてから10分程過ぎた頃だった。
入ってきた予想外の人物に私は驚いて。
だって蒼社の人間があれほど心酔している“五条様”が、蒼社の中庭で会っている悟君だったのだから。
『……え…あ』
声を出すなとは言われていたが、驚きで私の口からは言葉にすらなっていない声が漏れる。
同時に彼の役に立つ為なら頑張れると思った。
そして物語は冒頭に戻るわけだ。
「殺すなり、傍に置くなり、どう扱おうが構いません。貴方様の御心のままに」
『…は?』
私は五条様の役に立てと言われていただけで、殺されるかもしれないなんて聞いてもいなかった。
は?なんて声が漏れるのも仕方ないだろう。
意味が分からなかった。
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茜雫 - 書いている世界観が好きで何度も読んでいるので閲覧数の15分の1は私かもしれないです笑 (2020年11月29日 22時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - 茜雫さん» えぇ!前作から見てくださっていたんですか!?ありがとうございます!とても嬉しいです…これからも面白いと思ってもらえるよう、無理せず頑張ります!コメントありがとうございました!! (2020年11月29日 18時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
茜雫 - 初めまして!続きを楽しみに読みながら…何度も読み返してます笑前作同様、とても面白い内容なので、続きが楽しみです!無理せず更新頑張ってください! (2020年11月29日 18時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - いーすとさん» コメントありがとうございます!世界観が好きだと言ってもらえて嬉しいです。前作とは少し違う感じに書きたいなと思っていたので…これからも頑張らせていただきます!!ありがとうございます!! (2020年11月29日 16時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
いーすと - なんか世界観がめちゃ好きです!これからも頑張って下さいね!読み続けます!! (2020年11月29日 15時) (レス) id: e22cc70c93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年11月27日 21時