十二 ページ13
五条side
あの日、特に理由もなく、なんとなく忍び込んだ屋敷で見掛けた緋色に惹かれた。
混ざり気のない綺麗な緋色。
彼女と過ごす時間はそれなりに気に入っていた。
会話はなくとも、彼女の隣にいるだけで五条家でのことを忘れられたし、考える必要もなかったから。
自分の為ではなく、他人の為に生きると言っていた人形のような彼女に最初は苛ついてもいたが、2度目に会った時、あいつは初めて自分の願いを口にした。
外に行きたい___と。
その願いを聞いて、普段なら絶対やらないようなことをした。
俺が他人の願いを聞いてやるなんてなかったことだし、これからもないと思っていたのに。
外の世界を見て喜ぶあいつを大袈裟だと思いながら、可愛いと思ってしまったのも事実だ。
あいつに…Aに会えるのならこんな生活もまぁ悪くはないと思っていた矢先の出来事だった。
五条「…A…?」
その日は古くから五条に仕える家の者が来ると聞かされていたのに、俺の目に映ったのは暗い表情で五条の屋敷に入って行くAと付き添いの男。
全て理解した。
Aの言っていた、“凄い人の役に立つ為に強くならないといけない”という言葉。
その凄い人というのは五条家のことだった。
乾いた笑いが零れる。
Aに他人の為に生きることを強制したのは、自由を奪ったのは五条家だというのに、俺は何も知らないままあいつの生き方を否定した。
「悟様、客室に蒼社の者が」
五条「…分かった」
あいつを縛るくらいなら。
自由を再び奪ってしまうくらいなら。
「殺すなり、傍に置くなり、どう扱おうが構いません。貴方様の御心のままに」
『…は?』
訳が分からないといった顔をしたAに一度だけ視線をやる。
五条「そういうのウザい。…さっさと帰れよ、雑魚共」
俺が断ってしまえばいい。
こんなガキに仕える必要などないと思わせてしまえばいい。
例えAに嫌われたとしても、彼女が自由になれるのならそれで良かった。
Aを取り巻く呪縛がそう簡単に消えるものではないと知ったのはもっと後のこと。
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茜雫 - 書いている世界観が好きで何度も読んでいるので閲覧数の15分の1は私かもしれないです笑 (2020年11月29日 22時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - 茜雫さん» えぇ!前作から見てくださっていたんですか!?ありがとうございます!とても嬉しいです…これからも面白いと思ってもらえるよう、無理せず頑張ります!コメントありがとうございました!! (2020年11月29日 18時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
茜雫 - 初めまして!続きを楽しみに読みながら…何度も読み返してます笑前作同様、とても面白い内容なので、続きが楽しみです!無理せず更新頑張ってください! (2020年11月29日 18時) (レス) id: e0dca7bd69 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - いーすとさん» コメントありがとうございます!世界観が好きだと言ってもらえて嬉しいです。前作とは少し違う感じに書きたいなと思っていたので…これからも頑張らせていただきます!!ありがとうございます!! (2020年11月29日 16時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
いーすと - なんか世界観がめちゃ好きです!これからも頑張って下さいね!読み続けます!! (2020年11月29日 15時) (レス) id: e22cc70c93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2020年11月27日 21時