彼岸花はいらない【五条悟】

九＊ ページ10

？？？年____





『…あれ』




何やら長い夢を見ていた気がする。実際はそんなこと有り得ないのだけれど…というか私は何をしていたんだっけ。




？「A？大丈夫か？もしやどこか具合でも悪いのか！？」




『大丈夫ですよ、父上。私は元気です』




父を心配させまいと笑顔で答えれば、案の定安心したようで、ほっと息をついた。




父「元気ならば良かった。此処だよ、お前を診てくれる男がいるのは」




父の視線の先には大きな屋敷。



ああ、そうだ。思い出した。



私は最近よく体調を崩していて、お医者様に診てもらっても原因が分からなかったから、不思議な力を持つらしい五条様という方に父と会いに来たんだった。



どうしてこんな大切なことを忘れていたのか。




父「五条悟！いるのだろう！出て来い！！」




父が乱暴に戸を叩くものだから私は慌ててそれを止める。父は少しばかりせっかちなのだ。




？「………街のお偉いさんが僕なんかに一体何の用です？こんな人気のない場所に追いやった次は殺しに来た…とか？」




屋敷から出てきたのは誰が見ても目を引くような綺麗な顔立ちをした殿方。女性である私よりも綺麗だった。




父「違う。今日はお前に頼みがあって来た」




五条「頼み…？貴方が？僕に？？はは、冗談でしょ」




そこでようやく五条様は私の方を見て、そして鼻で笑った。




五条「あぁ、なるほど。そんな状態になってればそりゃ僕を頼りたくなりますよねぇ」




父「何か“視える”のか！？」




五条「視えていたとしても貴方は信じないんでしょ？だからこそ僕を気味悪がってこんな街外れに追いやった。違います？」




父と五条様が一体何の話をしているのかは分からないが、一つ理解出来たのは五条様が私達のことを良くは思っていないこと。




父「そんな話今はどうでもいいだろう！！娘を助けてくれ！」




五条「は？どうでもいい？それが人にものを頼む態度かよ」




父「なっ…！貴様！」




『父上！』




ここで割って入らなければ、父は更に酷いことを五条様に言ってしまう気がして。




『あの…五条様。勝手なお願いだということは分かっています。でもどうか…助けてはもらえませんか』




五条「娘の方がよっぽど立場を弁えてるみたいだけど？」




五条様の言葉に父は顔を顰めた。

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