五 ページ6
『五条君、体調は?大丈夫?』
動揺がバレないよう注意しながら声を掛ければ、彼は笑みを浮かべて答えた。
五条「大丈夫。ちょっとズレただけだから」
『ズレ…?』
どういう意味なのか問おうとしたが、五条君はそれを許してはくれなかった。
五条「そっちこそこんな無人店舗で何してるわけ?しかも一人で」
『え?』
一人と言われて私は再び振り返る。女性が座っていた筈の椅子にはもう誰も座っていなかった。
『さっきのは…』
夢ではない。私は確かに彼女に触れたし、彼女も私に触れた。それに起きたまま夢を見るなんて特技を私は持っていない。
呪霊の類でもなかった。だったら彼女は…?
五条「まぁいいや。着いてきて欲しい所あるから行くぞ」
『え、まだ帰らないの?また体調崩したらどうするの』
五条「絶対崩さないから大丈夫」
その自信は何処からくるのかと思い、言葉にしようと思ったが、何故か出来なかった。
先程から…正確に言えば五条君が私に声を掛けてきた時から妙な胸騒ぎがする。あの女性の言葉を真に受けてしまったからだろうか。
高専に戻ってから考えようと五条君の後を着いて行く。
五条「ふと気になったんだけど」
『ん?何かね』
五条「Aって彼氏とかいるの?」
『え…っ…と、唐突だな』
正直五条君がそういうことを聞いてくる人だとは思っていなかった。他人のことなんてどうでもいいと思っていそうなのに。それに…
『まぁ、気になっている人ならいるかもしれない』
と適当な嘘を吐く。
好きな人がいると言えば彼は当然根掘り葉掘り聞いてくるだろうし、いないと言えば“可哀想な奴”とでも言って馬鹿にしてくるのが目に見えている。
五条「ふーん…誰?俺が知ってる奴?」
『知らないんじゃない?遠くに住んでる人だし』
曖昧に返したのに掘り下げてくるとは思わず、嘘だとバレてしまいそうな返答をした。
五条「……………」
しかし五条君は嘘だと気付かなかったらしい。すぐに“嘘吐くな”という言葉が返ってこなかったのが証拠だ。
それにしても何故唐突に好きな人はいるかなんて聞いてきたんだ?この人は。今までそんな話したことなかったのにと黙ってしまった五条君に着いて行きながら考えていた。
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?(プロフ) - 今までで1番好きなお話に出会えて本当に幸せですㅠㅠ感情移入し過ぎて自分までもが懐かしい気分になってしまい不思議な感覚でした笑主様の文章力ありすぎて考察もしやすかったです、がち尊敬です!素敵なお話ありがとうございました🥹💗💗 (3月17日 7時) (レス) id: 0539db3d38 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» ありがとうございます…!次回作も楽しみにしていただければ…!!(o^^o) (2022年1月26日 17時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - 完結おめでとうございます!!!名作すぎるので何度も読み返します笑次回作も楽しみです!! (2022年1月26日 15時) (レス) @page42 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» えねごりらさんコメントありがとうございました…おかげさまで変な終わり方にはなりましたが完結できました…!本当励みになっていたので心からの感謝を申し上げますッ!! (2022年1月26日 1時) (レス) @page42 id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - すれ違ってる…切ないが溢れ出てます!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!更新お疲れ様です(о´∀`о) (2022年1月25日 21時) (レス) @page35 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2022年1月17日 20時