十五＊ ページ16
屋敷に滞在して一週間。外から猫の鳴き声が聞こえた気がして部屋の外に出ると、意外な光景を目の当たりにした。
五条「何、お前。また来たの？」
優しい声で話し掛けて黒猫を撫でていたのは暫く顔を合わせていない悟さん。どうやら私には気付いていないようで延々と黒猫の頭を撫でている。
五条「…怪我したのか、お前。……僕と一緒でお前も嫌われてんの？黒猫の癖に」
悟さんの口調は少し砕けているけど、声は普段のものより大分柔らかい。
…そして寂しそうだった。
五条「でも安心したよ。お前には見過ごさないでちゃんと処置してくれるお節介な奴がいるみたいで」
悟さんにはいないんですか？貴方を大切に思ってくれる人が…と心の中で聞き返してみるが、返事は勿論ないし、その答えについて私は知っている筈だった。
(…五条様に助けてもらったことのある者達まで彼を非難して…)
女中さんの言葉を思い出す。彼女達も悟さんのことを心配しているみたいだったけど、きっと悟さんにとって彼女達はそういう人達ではないんだと思う。
あくまでも屋敷の主人とその女中という関係性。
『…けほっ』
今日は少し冷えるせいか小さな咳が出る。相変わらず悟さんは私に気付かなかったけれど、黒猫の方は私に気付いたらしく、小走りで私の足元にやってきた。
そして抱っこしろと言いたげに鳴いた黒猫を私は抱き上げるが、そうすれば必然と悟さんも私に気付くことになる。
悟さんの方を見遣れば、案の定驚いた顔をしていた。
『おはようございます、悟さん』
返ってくるのは辛辣な言葉だと分かっていても、寂しそうに猫を撫でる悟さんの姿が頭から離れなくて彼に近付く。
五条「…いたんだ」
『…この子、人馴れしているから怪我をしてしまったんでしょうね。だからこそ応急の処置も出来たんですが』
五条「！…それ、君が？」
悟さんの視線の先には右後肢に巻かれた手拭い。日が経ったからだろう、手拭いには土が付着して、元々本当に白だったのか疑わしくなるくらいには茶色くなっていた。
『はい。……悟さんはどれくらい此処にいるんですか』
答えてくれないかもと思いつつ聞く。
五条「そんなの一々覚えてないよ。大分長いこといるけど」
その声はやはりどこか寂しそうで、彼は少し私に似ているのかもしれないと思った。
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?(プロフ) - 今までで1番好きなお話に出会えて本当に幸せですㅠㅠ感情移入し過ぎて自分までもが懐かしい気分になってしまい不思議な感覚でした笑主様の文章力ありすぎて考察もしやすかったです、がち尊敬です！素敵なお話ありがとうございました🥹💗💗 (3月17日 7時) (
レス) id: 0539db3d38 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» ありがとうございます…！次回作も楽しみにしていただければ…！！(o^^o) (2022年1月26日 17時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - 完結おめでとうございます！！！名作すぎるので何度も読み返します笑次回作も楽しみです！！ (2022年1月26日 15時) (レス) @page42 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» えねごりらさんコメントありがとうございました…おかげさまで変な終わり方にはなりましたが完結できました…！本当励みになっていたので心からの感謝を申し上げますッ！！ (2022年1月26日 1時) (レス) @page42 id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - すれ違ってる…切ないが溢れ出てます!!ヽ(ﾟдﾟヽ)(ﾉﾟдﾟ)ﾉ!!更新お疲れ様です(о´∀`о) (2022年1月25日 21時) (レス) @page35 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹葉
| 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時：2022年1月17日 20時
