十三* ページ14
屋敷滞在三日目にして私はついに自分の部屋を出た。今までも出ることはあったが、それは湯浴み等別の目的。
でも今日は特に目的もなく部屋の外に出ようと決めたのである。だって部屋に籠もって外の空気を吸わなければ治る病気も治らないだろうし。
いつだって未知の領域に踏み込むのは楽しみで仕方がない。逸る気持ちを抑えながら廊下を歩いていれば。
五条「あれ。なんで雅のお嬢様が此処に?まだ湯浴みの時間じゃない筈だけど…あ、もしかして厠?」
『いいえ。ただの散歩です』
こういう時に限って悟さんに会ってしまうのは何故なのか。湯浴みに行く際もこの廊下は通るけど、今までは会ったことなんてなかったのに。
そもそも悟さんと会うのは滞在初日振り。
五条「散歩って…僕外に出るのはあまりおすすめしないって教えてあげなかったっけ?」
『あれは教えるというよりも釘を刺しただけでしょう?』
五条「あ、流石に気付いてた?箱入り娘だから気付かないかと思ってたんだけど」
悪びれることもなく小馬鹿にしたように笑う悟さん。嫌いな人間の娘なんだからその態度は仕方ないのかもしれないけど、私にだって堪忍袋の尾が切れることはある。
『悟さんは誰に対してもその態度なんですか?』
五条「まあ殆どの奴らにはこうだよ。だって敬うような奴らでもないし、嫌いだから。嫌いな奴らに愛想振り撒く理由なんてないでしょ?」
はっきり聞いた。嫌いだから私にはこんな態度執るんだって。
知ってたけど…直接言われるとやはり気持ちの良いものではないし、寧ろ逆。
五条「君に部屋の外に出ないよう言ったのも、自分の家の中で嫌いな人間になるべく会いたくないから。だから早く自分の部屋に帰りなよ、雅のお嬢様?」
馬鹿にした様な態度を直すことなく、それだけ告げて悟さんは廊下の角に消える。
『なんっなの、あの人…!』
彼の前で怒り出さなかった自分を褒め称えてやりたい。
嫌われているのは分かっているし、父のしたことを考えれば当たり前。でもだからってあの態度はない。
…それともあんな態度を執らざるを得ないくらい彼の心は深く傷付いてしまったのだろうか。
『…だったらどうして私を治すなんて言ったの?』
疑問を抱えたまま踵を返した。
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?(プロフ) - 今までで1番好きなお話に出会えて本当に幸せですㅠㅠ感情移入し過ぎて自分までもが懐かしい気分になってしまい不思議な感覚でした笑主様の文章力ありすぎて考察もしやすかったです、がち尊敬です!素敵なお話ありがとうございました🥹💗💗 (3月17日 7時) (レス) id: 0539db3d38 (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» ありがとうございます…!次回作も楽しみにしていただければ…!!(o^^o) (2022年1月26日 17時) (レス) id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - 完結おめでとうございます!!!名作すぎるので何度も読み返します笑次回作も楽しみです!! (2022年1月26日 15時) (レス) @page42 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
刹葉(プロフ) - えねごりらさん» えねごりらさんコメントありがとうございました…おかげさまで変な終わり方にはなりましたが完結できました…!本当励みになっていたので心からの感謝を申し上げますッ!! (2022年1月26日 1時) (レス) @page42 id: 1a2812ca8a (このIDを非表示/違反報告)
えねごりら - すれ違ってる…切ないが溢れ出てます!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!更新お疲れ様です(о´∀`о) (2022年1月25日 21時) (レス) @page35 id: 71d3d1284f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2022年1月17日 20時