VI - 001 頭から足先まで正直になれ ページ38
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その時ようやくわかった気がした。鱗滝が最終選別へ向かう前日になって唐突に、あんな言葉をかけてきたこと。強く在り続ける大きな背中があの時だけは寂しく見えたこと。全てが繋がると形容しがたい気持ちになった。
Aの呼吸が明らかに乱れ始める。裁縫バサミでめちゃくちゃに断ち切られた穴だらけの布のように荒々しく、粗雑で纏まりのない呼吸が彼女の剣を乱していく。
燐野が異変に気付く。くつくつとどこにあるかもわからない、どの程度の大きさかもわからない喉とやらを鳴らす手鬼の視線はやはりAに縫い付けられている。
二人の言動から何か因縁深い物があると飲み込んだ。
このままではいけないと思うも、完膚無きまでに重りとなるだろう手負いの少女と呼吸を乱したA。
(詰みか───いや)
燐野はAに声をかけようと口を開いた。しかしズバンっとその口が塞がる。
手鬼に向かって愚直に迫るAの背中を見たからだった。
「馬鹿！！」
「馬鹿でいい！」
つい先程と同じような会話だ。燐野は制止の声を諦めた。予測が出来た。どうせ「その少女を連れて逃げろ」と言うのだろう。容易く想像が出来てしまうのだから呆れる。
「その少女と共に行け！ この悪鬼の手が及ばぬ所まで！」
帰ってきた言葉は想像の何倍も優しくて、燐野は反射的に叫び返した。
「だァれが行くか！ 此奴護りながら戦えばいい話だろうが！」
ひっと尻もちを着いた少女を半ば睨むように見下ろし、柄を両の手で握り締める。
「人間の子供はみーんなこうなんだなぁ」
手鬼が何かを呟いた。刹那───グシャリと嫌な音が鼓膜にもたれ掛かりそのまま許可も出していないのにとろけて溶けていった。気持ちの悪い感覚が体内に残っている。
手鬼の腕を駆け上がっていたAは瞬きより早く宙へ身体をひねり、先程まで立っていたそこへ足をつけた。
「お嬢さん大丈……っ！」
「間一髪だアホだら！」
地面から筍の如く生えて出た薄緑の腕が潰していたのは黄緑色の羽織だった。燐野の物だ。
視線を右にやると少女を多少乱暴に担いだ燐野が顔面蒼白で立っていた。
「大丈夫か？」
あまりにも儚い安寧。燐野、少女の無事を喜ぶ暇もなく背後から禍々しい声が降ってくる。Aは身体ごと振り返り構えに入った。
手鬼は燐野と、肩の少女に見やるとギョロりと目を細めた。
「その二人。明らかにお荷物だよなァ。お前一人ならまだ勝機はあったかも知れないのに」
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ミルクリ - 初めまして。とても面白かったです。続きが読みたいのですが�兇離僖好錙璽匹魘気┐討い燭世韻泙擦鵑�？これからも応援しております。 (2021年9月21日 12時) (
レス) id: 9baecbdda2 (このIDを非表示/違反報告)
コア - 面白かったです �兇離僖好錙璽俵気┐督困韻襪藩�難いです (2021年6月29日 20時) (レス) id: cdf587c2d2 (このIDを非表示/違反報告)
莉亜(プロフ) - すごく面白くて一気に読んでしまいました！！！続きのパスワードって教えてもらえますかね？これからも頑張ってください (2021年5月14日 22時) (レス) id: 6a10e782a2 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - おもしろくてとまらなくなりました！守護聖人IIのパスワード教えていただきたいです！ (2020年12月15日 20時) (レス) id: 833cf0aedc (このIDを非表示/違反報告)
糸針シナ(プロフ) - 楓さん» 楓さん、コメントありがとうございます！ひえ〜嬉し過ぎます…！そんな風に言っていただけて後衛の極みです〜！長編が好きなものでこの守護聖人も他作品もすごく長いですが楽しんで頂けたらと思います！短編もあるので宜しければ覗いて行って下さい〜 (2020年3月11日 8時) (レス) id: 2d5e82106c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：糸針
| 作成日時：2019年10月25日 13時
