【砂の虚像】 K.N 短編 7/14完結 (ページ5)

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「かずの心に入れてもらえないから！
寂しくて私、だからそれで…っ、」

「あっそう」

細い腕を掴んで玄関まで引きずっていく。
消えろ、消えろ、消えろ早く俺の前から。
もう同じ空気を吸ってることすら煩わしいんだよ何で分かんねぇかな。

「痛っ…ねぇ、待ってお願い待って！」

すがりついてくる腕も何か喚いている声も、
ヘドが出るほど鬱陶しい。
そういえばこの長い髪も気持ち悪かったな、
いつも生き物みたいに俺に絡みついてきて。
おかしいな、好きだったとこなんかやっぱなんもねぇわ。

「はい、じゃあね」

ドアの外に押し出して、ついでに靴も投げてやった。
どこぞの安いドラマみたいだなって、
思わず笑いがこみあげる。

「あーくっせぇ…」

甘ったるい香りがまだ玄関に漂ってる。
あいつの念が残ってるみたいに感じて、
息をしないようにしながら静まり返った部屋に戻った。

「ったく、持ってけっての…」

ポツンと残されていたあいつ用のマグカップを投げ捨てる。
乾いた砂山がサラサラと崩れていくように、
あっという間にあいつの存在が消えていく。
この部屋からも、そして俺の頭の中からも。

「…っふふ」

快感に近い満足感に包まれて、
俺は思わず身震いした。

「さて、と…」

失って惜しいわけがない。
崩れたらまた次の砂を待ってりゃいいだけだ。
次の女の形をした砂を―――

(…あーそうそうこっからだった)

画面を見つめて数秒する頃には、
俺は全てを忘れてゲームに没頭していた。