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- 続き
ある日の夜、家族みんなで食卓を囲む。珍しく喧嘩をしないばかりか、笑いあっている両親。
不思議そうな目をしてヒョンとそれを見ていた。
僕達もそれを見ていて安心したのか自然と笑顔になった。
その時、久しぶりに笑った気がした。
ピンポーン
ドアチャイムが部屋に鳴り響く。
『俺が出てくるよ』
と立ち上がって、玄関に向かうアッパ。
僕は引き続きヒョンとオンマと話していた。いつぶりにオンマの笑顔を見たかな…。
すると突然
『お、お前、何して…うわぁぁああぁぁぁあ!!』
アッパの叫び声。何があったのか、怖くなって耳を塞ぐ。
何があったかを確かめようとオンマが立ち上がろうとした瞬間、男が入ってきた。
『きゃああぁぁぁあ!!!』
その手には血濡れたナイフが握られていて、オンマも刺された。
『っ……やめろ!!』
そう飛び出して男の腕を止めようとするヒョン。暫くは止まっていたものの大人の力に子どもが適うはずもなく、ヒョンも刺された。
男はヒョンに飛びつかれたことが癪に障ったのか、執拗にヒョンを刺し続ける。
『ぐ、っ……ミノっ……
は、やく、ぅあっ……にげ………は、や……』
何度も何度も呻き声をあげながら僕の名前を呼び続けるヒョン。
「あ……ぁ、ヒョ、ヒョンっ…!」
足が動かなくて、逃げろと言われても逃げられず、ヒョンの刺されている姿を耳を塞ぎながら見つめ続けただけだった。
……そのヒョンの動きがぴたりと止まった時、
僕の腹に一気にナイフが突き立てられた。
腹に痛みを感じながらフラッシュバックのように脳裏に浮かんでくるのは学校で浴びせられる悪口、両親の喧嘩、そして家族みんなの痛々しい叫び声。
── 僕の世界はなんて汚れた音で溢れているんだろう?
こんな世界なら、
耳がなければ良かった。
そうしたら見向きもせずいられたのに。
…もう耳が聞こえなくなってしまいたい。
こんな世界なら
僕に音は要らない。
・
・
・
オンマとアッパは一命を取り留めたものの、ヒョンは多量出血のショックで死んでしまった。
あれからそのまま意識を無くして、病院に運ばれた時には
僕の耳は何も受け入れなくなっていた。
無音の世界に誘われてしまったのだ。
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ゆんく(プロフ) - 最高です!!更新頑張ってください!応援しています! (2017年4月15日 23時) (レス) id: 66ed5bea11 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カリナ | 作成日時:2017年4月7日 1時