へし切長谷部の記憶。 ページ2
へし切長谷部side
今からずっと昔。
俺は父上…刀工・長谷部国重によって打たれた。
元は大太刀だった…と思う。
そんなある日、父上は新たに刀を打とうとしていた。
「父上、また新たな刀を打つのですか?」
国重「あぁ、今回は短刀にしてみようと思ってな。お前の兄弟だ」
きょうだい。
その響きに心が踊ったのは今でも覚えている。
俺は新しい刀が出来上がるのを待ちながら、どんな兄弟だろうか、とわくわくしていた。
あれからいくつもの時間が過ぎ、鍛刀部屋から出てきた父上は少し窶れていたが、嬉しそうに顔を輝かせていた。
国重「できたっ…できたぞ!」
そう言って父上は下を向いた。
俺もそれに習って父上の足元に目を向けると、小さくて可愛らしい少女が居た。
俺の兄弟刀は妹だった。
国重「ほら、お兄ちゃんに挨拶しなさい」
「あ、えっと…短刀の長谷部国重です…」
小さい声でそう言った。
「あぁ、俺は大太刀の長谷部国重だ。よろしくな」
「お兄ちゃんも、同じ名前??」
国重「あー……名前付けようか」
そう言って父上は考え込む。
俺も考え、1つの候補が上がった。
「父上、"A"というのはどうでしょう?」
国重「良いな!よし、今日からお前はAだ!」
A「A……A…」
Aは何度も自分の名前を繰り返した。
A「A…素敵な名前!お兄ちゃん、とと様、ありがとうぉ」
そう言って微笑む。
俺と父上は思わず顔が綻んだ。
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作者名:ココ | 作成日時:2023年6月9日 18時