【刀剣乱舞】四季折々、夢惑い── (ページ5)

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空色細工『蛍丸』ページ5

「主、それ綺麗だね」

そう言って蛍丸が指差すのは、審神者の髪を留める簪
爽やかさを感じさせる硝子玉は、雲が泳ぐ空をそのまま映したような色をしている
キラリと光を反射し、無意識に視線ごと惹かれてしまう

それは昨日までは付けていなかったもの
もともとそういったものに無頓着な審神者だ
早くに本丸へ顕現した蛍丸にとって、珍しくイレギュラーな存在となった

「はは、私がこんなの付けてるのは珍しいか？」

「うん。けど、似合ってるよ」

「そうかそうか。これは昨日明石が買ってきてくれたのさ」

「国行が？」

思いがけない刀の名が発せられ目を丸くする
主に装飾品を買ってくるなど、普段の面倒くさがりな彼からは到底想像出来ないだろう
同派である蛍丸でさえも驚いているのだから

「そ。私もびっくりしたさ
あの明石が～！？ってな」

「ふふっ」

その時を再現するかのような審神者の大仰な演技
あまりのわざとらしさに蛍丸は耐えられずに笑ってしまう
審神者はそれを見て、悪戯が成功した子供のように歯を見せて笑う

そんな大人気のない審神者に呆れながらも、蛍丸は笑みを崩さない
それはまるで、我が子を見守る親のようだ

蛍丸という刀が顕現したのは、この本丸が設立された翌日のことだった
戦力の乏しい状況で彼の存在は大きな希望だ
新しい仲間が出来たということもあり、審神者も含め皆が喜んだ

昔から小さい子の世話が好きだという審神者
大太刀でありながらも背の小さい蛍丸をよく構っていた

もちろん、容姿が幼かろうが付喪神である彼の年齢は審神者より何倍も上だ
可愛がられる一方で、蛍丸も子守りをするような感覚で接していた

2人は部屋から見える空を見上げる
それは硝子玉のような青空ではなく、遠くが赤がかってきていた

流れていく雲の形状から、空を飾る色彩から
昼が、夏が、静かに終わりを告げていくのを感じる

「なんだか、涼しくなってきたな…」

「ん、そうだね」

「夜も肌寒くなってきたし、冷やすんじゃねーぞ」

「そっちこそ、お腹出して寝ないように」

「なんだとぉ！」

「「……ふっ」」

生暖かくも冷たい風が吹き抜ける中、同時に笑みを零す

─ カラン ─

そう音を立てたものは

空色の、【──】だった