理由 ページ7
彼を家の中へ案内すると、こなれた感じで家を褒められる。
「へぇ、めっちゃきれい。やっぱりAさんってキレイ好きだよね〜」
必要最低限やっているだけですよと遠慮したが、それをキレイ好きっていうんだよと返されてしまっては素直に受け取るしかなかった。
異性の家だというのに一切緊張していない様子の彼を、リビングの席に座らせる。
冷蔵庫にしまっていた麦茶を彼に出す。すると、彼は歯を見せて笑う。
「ありがとう」
真っ直ぐ目を見つめられると、どうにも来る物がある。照れているのを悟られない内に、彼の対面となる席に座った。
事情聴取だ。
呑気に麦茶を啜っている彼に話を切り出す。
「ねぇ、さっき何があったの？」
「ああ、あれ？」
その”あれ”しかないのだが。他にあるとでも思ったのか。
どこか能天気な彼の返答を肯定したところ、彼はポツポツと語り出す。ポンポンとテンポ良く、まるで笑い話を話すような口調で。
「ちょっと彼女に五股かけているのが何かバレちって、『和を殺して私も死ぬぅ！』ってキレられて」
五股？その単語を思わず聞き返すと「ご・ま・た。合ってるよ。まぁ信じらんないか」とヘラヘラと笑っていた。
話を再開すると、彼は麦茶の入ったグラスの氷をカラカラと鳴らす。
「んで、キレた後包丁を構えて。牛みたいに俺に突撃してきて」
「ガチでこのままじゃ死ぬ！…って思ったからベランダから飛び降りて逃げた」
Aさんの家に来たのも、下心半分、生存本能半分かな。
そうさらっとセクハラと衝撃発言をしていく彼に、私は啞然とするしかできなかった。
「窓見てみなよ、多分いるから。俺の彼女」
その言葉に従う事が私にはできなかった。
きっと実際に見てしまえば、かけがえのない思い出と化してしまうだろう。
私が彼だけを見つめていると、彼はまた笑う。
「そんなに見つめてどしたの？もしかして俺の事好き？」
いるかもしれない彼女さんの前で、私を口説こうという気になる神経が不思議だった。
女遊びをしないと死ぬのだろうか。
そんな事を私が考えていると、急に彼は真剣な表情で言ってきた。
「ねぇねぇ、Aさん。家、泊めてよ。このまま外出たら俺殺されちゃう」
「えぇ…」
殺されちゃう、という言葉の信憑性は高かった。彼の話を全て鵜呑みにすれば、今の彼の彼女は相当頭に血が登っている。
今まで彼を追い出せば、彼を見殺しにするも同然だろう。
しかし、それは…私も浮気相手として認識されないだろうか。
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名も無き者(プロフ) - そう言って頂き嬉しいです…！イベント参加させて下さりありがとうございました！ (3月7日 6時) (
レス) id: b52add099d (このIDを非表示/違反報告)
あめ(プロフ) - この度はイベントへの参加ありがとうございました！(連投申し訳ございません) (3月7日 0時) (レス) id: 82abefb882 (このIDを非表示/違反報告)
あめ(プロフ) - コメント失礼します〜！題名的にギャグ系かと思いましたが、想像より遥かに真剣なお話で良い意味で期待を裏切られました…！描写も細かく、もっと有名になるべき作品だと感じました！これからもお時間あるときにでも閲覧させていただきます！ (3月7日 0時) (レス) id: 82abefb882 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名も無き者 | 作成日時：2024年3月6日 17時
