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『もう帰るんでしょ?早く帰ろ』
「……そもそもこんなに遅くなったのAのせいなんだからね!まったくもー!」
『え、待ってよ!!』
掴んでいたはずの腕がするりと抜けて、ぷんすかしながらまふが廊下を歩いていく。
確かに私のせいかもだけどまふだってずっと止まったまま動かなかったのに……
『まふが彼氏ってなんか嬉しいね』
「きゅ、急に変なこと言わないで!」
『変じゃないでしょ今の』
隣に並んで歩いたら、ちょっとだけ歩幅を合わせてくれる。うわ、うわ、まふってこういうことできちゃうタイプだったの。
今まで気にしたことなかったけどそういう小さな部分で私への愛情が伝わってくるとなんかむず痒くなる。
「で、なんだっけ?誕生日祝って欲しいんだっけ?」
『あ、そうだ!私誕生日に遊園地行きたいの!』
「はぁ?誕生日明後日でしょ?馬鹿なの?」
そういう会話をしながら、ちょっとドキドキさせてやろうと企んで手を掴む。
しかし思ったような困惑した表情は一切見られず、表情どころか視線を一瞬たりとも変えないままするりと恋人繋ぎをされた。
心臓がどきりと跳ねるけど、それを悟られるのも嫌で必死に平気なフリをして取り繕う。
『えー、じゃあまふの誕生日でいいや』
触れた指先から、手の平から、彼の体温が伝わってくる。
ちょっとだけイチャイチャしたくて、腕に頭を近づけて寄りかかったら、慣れたような手つきで優しく頭を撫でられた。
けどちらりと顔を見たらさっきよりも大分照れてるようで、余裕もなさそうで。それが見れただけでなんだか嬉しくなる。
「じゃあって何、じゃあって」
あははって2人で笑い合う。
いつもの君と、いつもの帰り道。
いつもと違う距離感に、馬鹿みたいに胸を踊らせて。
─── 結局私とまふの誕生日、まぁつまりは2日とも遊園地に行ったことは、私たち以外知らなくていい。
Fin.
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なの(プロフ) - 本当に本当にありがとうございます。感謝しかないです…こんなに素敵な誕生日は初めてです…ホントはもっと早く送りたかったけどずっとチキってました。すみません…みんな大好き!! (2021年11月14日 1時) (レス) id: d994763904 (このIDを非表示/違反報告)
らむちゃ - すごい好きです(((*≧艸≦)ありがとうございます! (2021年10月13日 20時) (レス) id: def79cd7ab (このIDを非表示/違反報告)
りょくちゃ(プロフ) - 大好きな作者さまたちの最高の作品でした。本当にありがとうございました。 (2021年10月4日 17時) (レス) id: f217387575 (このIDを非表示/違反報告)
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