8話 ページ9
薬研side
初めは殺してやるつもりだったんだけどな。なんて、広間へ向かいながら考える。
初代は良い奴だった。誰にでも優しくて、よく兄弟達とも遊んでくれた。…けど、心臓発作で亡くなっちまった。
2番目の審神者も良い奴だった。…昔から仲が良かったという親友が死ぬまでは。その日からお可笑しくなった。精神が安定しなくなって、俺達を殴っては涙を流して謝ってた。
何とか助けたくて支え続けたけど政府からの監査の時に捕まっていった。
少し人間に、審神者に対して不信感を抱き始めた頃。
3番目の審神者が来た。何かあった訳でもない。ただの快楽の為に俺達を殴り、強制的に出陣させ傷を放置した。何人か折られた奴もいる。ソイツはよく俺達短刀を審神者部屋へ呼んだ。何をされたかなんてお察しだ。
そしてある日我慢の限界が来ていち兄がソイツを斬り殺した。俺達に平穏は訪れたけど政府によっていち兄は刀解された。
けどその平穏も長くは続かなくて、4番目がすぐに来た。ソイツはレア太刀好きで、質は良くないが霊力量は多かったから俺達も逆らえなかった。毎日機嫌を伺って少しでも好かれるようにした。気に入られなければ言霊によって無理やり仲間を殺させようとしてくるから。
そしてソイツもつい先日死んだ。いや、消えたんだ。俺たちの中の誰かによって神隠しされたんだろう。
だが政府は練度も高くて刀剣男士も多いここを壊したくないらしい。
また新しい審神者が来る事になった。
どうせまたろくでもない奴だろうと思った。ソイツといち兄が刀解される事になった原因の奴は別だとわかってる。でもどうしても俺の手で殺したくて、俺が新しい審神者の様子を見に行くことになった。
けど実際会ってみればどうだ?
初代と壊れる前の2番目を思い出させるふんわりとした笑顔と真剣な表情。
俺の事も気遣ってくれた。刃を向けた俺にも優しく笑いかけてきた。
この人なら信じられるのかもしれない。
そんな事を考えながら俺は広間に続く扉に手をかけた。
薬「入るぜ。」
「おかえり。怪我しなかった?」
薬「あぁ、大丈夫だ。それと、今から広間に来るらしい。」
「なっ、殺さなかったのか!?」
薬「会えばわかる。良い奴だったぜ。」
「ハッ、向こうは顔を見る前に首が落ちるだろうがな。」
そう鼻で笑って言う。少し心配だが大将ならなんとかなるか…?
…こんなところで死なないでくれよ、大将⋯。
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作者名:シノン | 作成日時:2024年1月22日 12時