▽ ページ11
『その代わりに…』
あ、これはまずい…
咄嗟にそう感じた。
自ら弱みを握らせてしまった。
何を要求されるかわからない。
『また歌聴きに来ても良いですか?』
壱「え?」
予想外の言葉に、気の抜けた声が出た。
壱「そんなことで良いの?」
『え?むしろ良いんですか?』
壱「まあ別に良いよ」
なぜか俺の方が不思議がられている。
俺が良いと言った瞬間に目を輝かせた。
『では、失礼します!また歌聴かせてください!』
名乗ったり、連絡先を聞こうとしたりすることもなく、さっさと帰って行った。
壱「なんだ、あいつ…?」
1人残された俺は呆然としてしばらく動けなかった。
それから、俺は週2くらいのペースで屋上で歌った。
気が向いた時に行っているのに、
あいつは毎日屋上にいて、どこに隠れているのか
俺が歌い終わると拍手しながら現れるのだった。
壱「お前いつもどこに隠れてるの?」
『え!隠れてなんかないですよ』
壱「でも俺が入ってくる時はどこにもいないじゃん」
『あー、じゃあ見に来ます?』
着いて行くと、屋上の中でも高くなったスペースに登る扉があった。
そこの鍵は持ってないから近づいたことなかったなー
ガチャ
扉を開け、少し階段を登ると、この学校で一番高い所に出た。
壱「ここの鍵も持ってるんだ…」
『校長先生雑すぎて、屋上の鍵一式くれたんです笑』
校長…。
大丈夫か?
『ここ高くて気持ちいいんです』
たしかに。
空がいつもよりもずっと近い。
暖かい日差しと風が気持ち良かった。
壱「寝転がってもいい?」
『どうぞどうぞ!寝転がって空見るの最高ですよ!』
寝転がった俺の隣に、あいつは何のためらいもなく寝転がった。
呑気に空を見て微笑んでいる。
なんで俺の方が意識しなきゃいけないんだよ…
135人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翡翠 - もう最高です! (2020年3月2日 12時) (レス) id: 7a62fb35b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藤ちぇる | 作成日時:2020年2月28日 21時