パルファムの夢【BLオリジナル】 (ページ8)

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「でも、肇と歌いたいんじゃない？」

「…………」

「元々、二人はデビューさせるつもりだったよ。これは本当に。実力が研修生の中のツートップだからね。俺が言いたいのは、この先も安定して売れたくないか？ってこと。今の時代、イケメンでも歌が上手くてもダンスが良くても……要は、実力があったってメディア露出がなければ簡単には売れないのさ。」

社長は椅子から立ち、窓から夜景を眺めて、こちらへ来なさいと手招きをした。

渋々向かうと、肩を寄せられる。暗い表情をした僕の耳元で囁いた。

「この会社は大手ではない。何事にもコネクションが重要なんだよ。それを手に入れるのだって大変だ。」

もう一度、ぐい、と社長に肩を寄せられたかと思えば、服の下に手を入れられる。微かに声を漏らすと、社長は低く笑い、僕にもう一度畳み掛けるように囁いた。

「社長のコネ、欲しくはない？すごく便利だと思うよ」

「……いりません。」

「俺だけじゃない。俺の知り合いのコネだって手に入る。そしたら君も肇も絶対に出世できるよ。」

ずるい方法だと思う。実力で戦うのではなく、人脈を利用した売り方。
これから相方になる男の望むものは何なのか。自分の鍛え上げた魅力をステージで披露すること？メディアに出て注目の的になること？お金を稼ぐこと？

考える一つ一つの目的が、全て僕が今からする行為で容易に達成できるのだと、思ってしまった。

まだ僕は幼かった。別の事務所に移動しようとか、そもそも僕みたいな少年と言えるべき年齢の人間に手を出すのはおかしい、誰かに相談しようとか、考えもしなかった。

男に手を出されてる情けない男だと思われたくないから事実を隠した。事務所を移動したら大輔は絶対に理由を聞いてくるし、はぐらかせる自信もない。何より……

「肇は憧れだったんだろう？」

憧れの肇と、別グルになったとしても、同事務所ってことで、いつかは共演したいと思ってたからひたむきに頑張ったんだ。

「声の相性も良い、ダンスも君達は似た系統で、君と肇の顔立ちのバランスも良い。きっとメディアに出ることさえできたら売れるよ。」

社長と同じことを思っていた。心のどこかで僕と肇は最強のコンビになれるんじゃないかって思ってた。

「あの……」

「なんだい？」

「……相沢には、手を出さないでくださいね。」

「あはは、大丈夫。俺は真にしかこうならないよ。」

その晩、初めて僕は社長を受け入れた。