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なんとなく真ともういたくなかった。
真が悪いわけじゃないのがわかっていたから、余計に早く帰りたくて。冷静になりたくて。
俺もいつか社長に誘われるかな。
真と社長じゃなくて、真と俺と社長でメシとかはダメなのかな。
眉間に自然と皺がより、自分の荷物をまとめて楽屋から出る。振り向かず、後ろでもたもたしていた真に目を向けず、「おつかれ」とだけ吐き捨て立ち去る。
……予定だったんだけど、収録前の時みたいに、また腕を掴まれた。
「肇、やっぱりごめん。俺、今日怒らせたよね。だから、ちょっと話さない……？少しでいいから。」
俯いたままで、声は震えていた。気丈な男だし、自分の明らかな不機嫌を振り返ってみれば、流石に気にはするか……と少し反省をした。
「いや、怒ってないよ。俺こそ気を遣わせてごめん。でも今日、マジで用事あったからもう帰るわ。竹本、次の俺等のスケジュールいつだっけ。」
「3日後のバラエティ番組のゲスト出演です」
「じゃあ、3日後また。」
「……うん、わかった、ごめん。またね。」
悲しげに、寂しげに眉を下げた真は小さく手を振った。俺も片手を上げて、ドアを閉める。真は悪くないどころか、俺の不機嫌に付き合わされた被害者だ。
今度ご飯行く時は、真の好きなものを食べさせて、奢ろう。俺は帰りの車で真の好きなオムライスの美味しい店を調べていた。
「あの……肇さん。」
「ん？」
普段はあまり車内で声をかけてこないマネージャーが、珍しく口を開く。曲でもかけたいのかと思ったけど、言われたことは想像を絶する内容だった。
「真さんが……」
「真が？」
「……その、枕営業をされてるって噂が流れているんです。ご存知ですか。」
「はあ？お前噂なんか当てになんないぞ、マジで言ってんの？」
若干乗り出して反論すると、マネはすみません！と食い気味に言った後に、でも…と言葉を続けた。
どうやらその噂は所属している事務所内で流れているらしく。おそらく相方である俺には流れないようになっていたんだろうけど、ほとんど、もしかするとフェアビアンカ以外の全員が「真の枕営業」について噂するのだ。
原因は社長の定期的な呼び出し。俺もかなりの頻度で真が構われているとは感じていたけど、悪質な噂を立てるヤツの気はしれない。
確かに真の実力にも、人柄にも嫉妬はしていたけれど、大切な相方に変な噂を立てられていい気はしておらず、マネにひたすらキレてしまった。
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作者名：Me | 作成日時：2021年9月23日 18時
