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その後、真は社長との約束を取り、社長は「じゃあまた今夜」と踵を返した。初めから真にしか用はない。俺はそもそも誘われやしない。
確かな不満や憤りを感じてはいたが、これから収録で、ファンも沢山スタジオにいるわけだから……そんな雰囲気を醸し出してはいけない。気持ちを切り替えるように両頬を叩いた。

「あの……肇?ごめん。」

俺より少し後をついて行くように歩いていた真が、小さく謝った。

「何が?」

「……あ、いや。やっぱなんでもない。収録頑張ろうな。」

微妙でどことなく気まずい空気が流れたが、スタジオに入れば俺も真も本番モードになる。ファンが歓声の雨を降らし、俺達は軽くサービスをする。

「本番5秒前ー、4、3、2……」

そうして、今度こそ「いつも通り」に仕事をこなした。
オープニングをやって、ゲストを紹介。今日のゲストは別事務所の3人組アイドル。

「3人は仲が良いってことで有名ですよね。以前もSNSでご飯の写真あげてたりとか。」

「え、真くん俺等のSNS見てんの!?超恥ずかしいんだけど〜!」

「でも、フェアビも仲良いっしょ?この前のライブとかさ〜、MCがすげー仲良さげだったし、なんならお前らカップルかって!」

会場が笑い声で包まれ、真も「んなわけ〜」と軽くあしらう。二人組のアイドルはお互いしか仕事仲間がいないせいか、こういういじりもよくあるような気がする。ネットでもよく「フェアビアンカは夫婦」といったようなことも見るほどだ。

だけどそれをあえて利用していた。所謂「ビジネスカップル」に近いもので、どことなくいい感じに俺と真が"そういう関係"であることを匂わせるのだ。

「あはは、まあね。今日もこの後二人でデートなんで。」

会場が盛り上がる。キャー!という歓声に合わせてカメラ目線でウィンク。「違う違う!ご飯行くだけだって!きっしょい言い方すんな!」と真の否定が入るのがワンセット、なんだけど。

「もう、それは内緒の話だっただろ」

と、語尾にハートでもつくんじゃないかと思うほど甘い声、口調で。口元でしーっとしながら言われた。

予測していなかったことに若干困惑するが、今回はサービス回ということで収めるために、真の席まで行って肩を組む。

そんなこんやで、予測不可能が積み重なった一日の仕事は全て終わった。
ゲストに挨拶をして、片付けをして、マネージャーを呼ぶ。

「俺もう今日は帰るから。車出して。」

「あれ、真さんとのご約束は……?」

「今日ないよ。早く。」

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作者名:Me | 作成日時:2021年9月23日 18時

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