検索窓
今日:5 hit、昨日:8 hit、合計:202 hit

ページ13

「ああ……だってあれ、仕事用だし。」

「仕事用?」

「うん。仕事の時しかあれはつけない。……正直、そんなに好きな匂いでもないんだ。」

好きでもないのにつけるのかよ、という野暮な言葉は飲み込んだ。仕事に拘りのある真のことだから、何かしらの理由があるんだろう。だけど……

「俺、今のお前の方が良いな」

「肇もあの香水好きじゃないの?」

「いや、単に今の匂いの方が好きなだけ。」

「えっ?」

れんげで掬ったスープの水面を見つめながら何気なく呟いた。いつも本番前で緊張してる時に嗅ぐ匂いだからか、落ち着かないのかもしれない。
香水をつけていなくてもなんだか真からは匂いがする。落ち着く、どこか穏やかで優しい感じの。

「ああ、おばあちゃん家と似た匂いがするんだわ」

「いや、なにそれ……照れて損した…………」

「え?照れてたの?」

「いや照れるだろうよ!お前、俺に匂い好きって言われたらどう?」

「……ちょっと恥ずかしい。」

「でしょ?」

口を尖らせて全くもう、と言う姿から、昨日の雨の中のメンタルから大分回復したようで少し安心した。
日頃の真に対する妬み嫉みのせいで、こいつを削っていたのは俺だろうと思い今では猛反省。こうして時間を作ることができて良かったとしみじみする。

少し冷めたチャーハンを頬張りながら、これからは定期的にメシでも食いに行こうと思った。
俺がそう思うように、真も俺を信頼しているはずだから。嫉妬すると同時に心から尊敬してる。だから……

「真」

「なに、肇。」

「これからもよろしくな、フェアビアンカとしても、相棒としても。」

「ふふ、言われなくてもわかってるって。僕こそよろしくね、肇。」

お互い手にしていたコップで軽く乾杯をする。酒でも買いに行くか?と声をかけると、随分乗り気に行く行く!と真が言うものだから、ほんとお調子者だと思いつつも、いつもの明るい様子の彼が見れて、やっと心の底から安堵することができた。

二人で家の近くのコンビニに行って、ビールやらつまみやらを適当に買って、家で乾杯する。

最近はあまり二人で出かけることもなくて、酒を交わすのも久々だったと、この時気づいた。談笑しながら冷えた酒をグラスに注いで、ナッツを食べる。

「てかさ〜前のドッキリ企画酷かったよねえ。僕ら泥にドボーンだよお〜」

「アイドルがそういうのしてたら視聴率稼げそうじゃん」

「それはそうだけどお」

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:BL , オリジナル , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Me | 作成日時:2021年9月23日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。