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「ただ、会いたくなったんだ。肇に……」
「はあ?3日後会えるじゃん」
「そうだけど……ごめん。迷惑だったよね。」
「なんだよ今日のお前……やけにしおらしいじゃねえかよ。別に迷惑なんて言ってないだろ。大事な相方だし、いつでも来たらいいよ。」
「……っ、そう、そうだよね…………肇は、嘘吐かないから…………」
「おいおい泣くなって!マジでお前今日どうしちまったんだよ」
サンドイッチを皿に置いて、真の双眸から溢れ出る涙を親指で拭う。真の潤んだ瞳がこちらを見て、僅かに笑んだ。
ふと、真の両手が俺の頬に伸びてきて、ふわりと撫でられる。真以外のヤツにやられていたら、間違いなくぞわぞわしただろう。
ああ、本当に俺は真を信頼している。
やっぱり唯一無二の相方なんだ。
だから俺が真を悪意から守っていかないと。
「大丈夫、お前のことは俺が守るよ。」
「……肇、あの噂、知ってるの?」
「うん、竹本に聞いた。でも俺信じてないから大丈夫。確かに社長、お前のこと結構気に入ってると思うけどさ。お前がそういうことはしないってわかってる。」
「……うん、そっか。ありがとう、肇。」
する、と俺の頬から両手が落ちていく。首のタオルで目を拭いてやろうとすると、大丈夫、と手を押さえられた。
真は自分の指で目元に浮かんだ涙を払い、僕もコーヒー飲もうかな、なんてマグカップに手を伸ばした。
その日は家にあったDVDを二人でコーヒーを飲みながら見て、明け方まで起きて遊んでた。目が覚めたのは昼頃で、真は既に起きていて昼食を作っていた。
「まこと……?」
「あ、肇。おはよう……なんて時間でもないわ。泊めてくれたお礼にご飯作ってた。男飯で申し訳ないけど。」
真はそう言って皿に盛ったキャベツチャーハンをテーブルに置いた。横にはたまごの中華スープも並べて。
「ここまでできたら……ふあ……100点だろ…………」
あくび混じりに感想を述べ、椅子に座ると満足そうにんふふ、と笑って肇が俺の正面に座った。
「いただきます」
「いただきます」
二人で手を合わせて、起きたままの姿で挨拶をする。「フェアビアンカは夫婦」……といった書き込みも、あながち嘘ではなかったのかもしれないとちょっと思った。
お茶を取りに一度席を立つついでに、真の方へ寄ってなんとなく匂いをスン、と嗅いでみる。
「肇?」
「お前、今日は香水つけてないのな」
いつもの薔薇の匂いが今日はしなかった。
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作者名:Me | 作成日時:2021年9月23日 18時