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確信はなくて、その瞬間はほとんど勘でしかなかったんだけど。
その顔はいつか見たAの顔とは似ても似つかない、アジア顔の美人な方の顔だったけど、それ以外に目を向けると…
その、耳の形とか。
指の長さ、小さな手とか。
首筋から肩につながるラインとか。
タイトめなユニフォームのスカートから伸びる脚の、膝とかふくらはぎとかくるぶしの形とか、そんなん全部。
この体、俺のだよって。
俺のハートが叫んだもんで。
『お客、様』
ほら、声も同じじゃん。
大きく見開いて、俺を見た目の中に、明らかに腹立てた俺の顔が写ってる。
「どういうつもり?」
俺の言葉に、打たれたように震えた肩。
なんか試してるんなら、もっと徹底しなよ。
「ねえ、なんで、わからないって思ったの?」
立ち上がって、見下ろしたら。
ほら!この顔の位置!
思わず両手を伸ばして引き寄せて、俺の腕にすっぽり入る小さな体をぎゅうぎゅうに抱きしめていた。
JM「ひ、ヒョン!何してるんですか?スタッフの人にそんなことしたらダメですよ!!」
ジミンが慌てて俺の背中を叩いたけど、俺はジミンの顔を見てはっきり告げた。
「ジミン、大丈夫。これ知り合い。て言うか、俺の」
「彼女」
俺の言葉に、びくんっ、て腕の中の体が跳ねた後、それからふるふるって小さく震え始めた。
俺は逃がさないよう注意深く腕の力を緩めて、胸に押し付けていた顔を片手でそっと持ち上げる。
ほんとに全然知らない顔なのに、じっと見てたらどこか面影はある気がする。
真っ暗だった目が老婆の皮を脱ぎ捨てて、潤んでキラキラ光を湛えて、あの夜見た目と同じ色に変わってた。
『どうして、わかったんですか…?』
あ、認めたね?
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作者名:フネ55 | 作成日時:2023年1月28日 22時