26話 思い ページ28
_____監視対象である、Aを。
その言葉が、私の胸の何処かに引っ掛かった。
監視対象でなければ、萩原社長は私を引き取らなかった?
はは、と乾いた笑い声が口から零れた。
「じゃあ、お父さんは、私が監視対象だったから引き取ったんだね」
そんなの当たり前じゃないか、ポートマフィアでも、道端でも人を沢山殺した私を引き取ろうなんて誰も考えないさ。
だけど。だけどさ。
あの時、四年前のあの日。
異能力が暴走して居た私を抑えて呉れた、血に塗れた私に声を掛けてくれた。
『俺の元に来ないか』萩原の声が頭に響く。
「……私は、ただの特一級危険異能者で、ただの監視対象。そうでしょ」
「………確かに、初めはAを“特一級危険異能者、監視対象”としか見て居なかった」
やっぱり。
私はただの監視対象。それ以上、何を求めていたの。
四年前のあの日。皆が軽蔑の目でしか見て呉れなかったのに、萩原だけは違う気がした。こんな、血に塗れた私を救い、変えて呉れる様な気がして為らなかった。
だけど、違った。
私は、ただの監視対象。特一級危険異能者。
私を引き取ったのも仕事の一貫。自分の功績を立てるための。
嗚呼、そうか。私は幸福には為れない。
同情の視線一つ向けられない。
だけどね、お父さん。
「だが、Aと生活して行くうちに……お前を、ただの監視対象として見なく為った……俺は……っ!Aに……!」
萩原がいう。こんな感情的な萩原は初めてだ。
私、貴方に引き取って貰えてよかった。
仕事の一貫だったとしても、嬉しかった。
この私を引き取ってくれて、ありがとう。
この四年前、きっと、私は楽しかったんじゃないかな。
「ねえ、最期に教えて」
______私は、誰の子供なの?
萩原は私の目を見る。
「…………………森鴎外と、その側近の女性だ」
私は、森鴎外の娘。
私は武装探偵社を飛び出した。
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「もしもし、コナン君?この前、太宰さんと電話番号交換してたよね?」
『したけど……それがどうしたの?』
「ううん、その方が都合良いなぁって。……………それでね、コナン君。
私、もう君達とは会えない。武装探偵社は辞める。太宰さん達から電話が掛かって来ても、私の事は捜さないで。じゃあね」
『!?ちょ、Aさ____』
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作者名:さくら志摩 | 作成日時:2018年8月9日 18時