貴方に好かれて痛かった【不死川実弥】

疲れたんだ ページ20

side A

お風呂から上がり、冨岡さんが置いてくれた着替えを着る。
少しでかいが、許容範囲だろう。

『お風呂、ありがとうございます…』
冨「あ、あぁ。A…ちょっといいか？」

冨岡さんが近付いてくるので、思わず後ずさる。

『あっ、ご、ごめんなさ………』
冨「…いや、いいんだ。とりあえず、座ろう」

冨岡さんが悲しそうに目を伏せ、椅子へ移動した。
私は罪悪感で胸がいっぱいで、頭が真っ白になっていた。

椅子に座り、冨岡さんと向かい合う。

冨「……始めに、本当に、すまなかった」

冨岡さんは謝罪の言葉を述べると、深々と頭を下げた。
煉獄さんの時とはまた違った謝り方で、少し戸惑う。

『え、あ…そんな、顔を上げてください！！力強！！ちょ、ほんとに大丈夫ですから！！！』
冨「…お前は、人が良すぎる。」

冨岡さんがあまりに真剣な眼差しで見てくるから、またも戸惑った。

冨「俺はAを追い出した原因の一人。なら、手はたきの一つや二つくらい、やってもいいんだぞ」
『…そんなことしても、何にもなりませんし』

私は少し目を伏せる。
冨岡さんは少し驚いた様子だった。

『それでは、私の心がスッキリするだけであって、冨岡さんを許せる許せないとはまた別のことです。私、人に暴力を振るってまで、自分の心をスッキリさせたくはありません……』
冨「…」

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