兄と私と彼

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公園のベンチに座ると、
夕日が眩しくて、目を閉じた。





さっきの男の人に悪いことしちゃったかな。



鞄からウォークマンを取り出し、
イヤホンをつける。





耳から流れる音に集中すれば私1人だけの空間。





人が沢山いる世界は苦手だ。




人の心の中を読むのも、
読まれないように上辺だけ取り繕うのも


得意じゃないから。





だから、こうやって、自分だけの世界に入り込むと安心する。






微かに聞こえた声に目を開けると、
そこには編入生のイケメンくん。






「なにしてんの？」





イヤホンを外せば、

そんな声が聞こえてきて、






『音楽聴いてるの』






呟いた言葉は、素っ気なさを含んでいて、

自分でも驚いた。






「なんの曲？」







だけど、
そんなこと気にもしないで私の隣に座ると、



片方のイヤホンを耳につけて






「ラ・カンパネラ」






そう言って笑った。






『知ってるの？』






それは私が好きなリストの曲。






「知ってるよ」

『犬みたいだね』

「急だね」







人間は苦手。






でも、




きっと


好きになるのは一瞬。

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