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「すまんね」
ずっと黙っていた広津さんの突然の謝罪に、私は少し目を瞬かせて彼へ目を向けた。凪いだ表情こそしているものの、気のせいだろうか。
少しだけ――ほんの少しだけだが、その瞳に申し訳なさそうな色がチラついているように見える。
「人虎を捕らえるまでは、ここに居てもらうことになっている」
「……構いません。こういう処は慣れてるので。でも、どうしても彼を捕まえる気ですか」
「70億の懸賞金だ。此処で見逃す程マフィアは甘くない。運が悪かったと思ってもらうより他にないな」
私は視線を石畳へと落とした。
運が悪い。それは多分きっと、間違った言葉ではないのだろう。
(でも、一人の人間の人生が無茶苦茶になるのに。それをそんな言葉で片付けて良い筈がない)
例えば私が懸賞金をかけられたとして、それは私の行ってきた事を考えれば自業自得だと云えるだろう。
けれど敦さんはどうだろうか。彼がしたことと云えば、異能を制御出来ず、精々が畑などを荒らした程度。
たったそれだけで――否、荒らされた側からすればそうではないだろうが、それでも、命を脅かされる程のことをしてしまった訳ではない。
(敦さんは善い人だ。優しい人だ。まだほんの少ししか関わってないけれど、それくらい判る。
そんな彼が何処の誰とも知れない人間達の勝手な都合で、歩いて行ける筈の「善い人生」を壊されていい筈がない)
この世界がどれだけ理不尽で残酷であるのかを、私は知っている。それがどの人にも降りかかる可能性があることも、嫌という程判っている。
それでも。それでもせめて、平和な世界で生きている人達にまで、その手を伸ばさないで欲しいと願ってしまう。暗闇に沈んで良いことなど、きっと何も無いのだから。
「……人虎を捕えるのに数日もかからないだろう。少しの間、此処で大人しくしていたまえ」
黙り込んだ私にそう云い残し、広津さんは立原さんと銀さんを連れて牢を出て行った。鉄扉が閉じる重い音の後にガチャリと鍵が掛けられ、三人の気配が遠ざかっていく。
それを確認して、私は周囲に視線を巡らせながら長く息を吐いた。
(……却説。いつ、逃げようかな)
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霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます！大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀｀)ノ頑張って更新しますね！ (2020年3月12日 7時) (
レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね！ (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね！すみません、修正します！ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜夜華
| 作成日時：2019年11月28日 1時
