9-1 ページ3
終日続いた書類整理は、通常業務と並行して行う為にその日の内では終わらず、もう一日もの時間を要した。そしてその翌日である今日は、二日かけて纏めたそれらを漸く倉庫へと運ぶ段階だ。
何故か居ない敦さんが気に掛かりながらも、私は国木田さんと共に纏めた書類を抱えては、
(何だか色々と、物騒過ぎる気がする)
先日の谷崎さんの断末魔と何かを切り刻むような音といい、つい先程の、近場から聞こえた大きな爆発音と立ち上った黒煙といい、非常に周囲が騒がしい。
表の世界は基本平和なものだと思っていたのに、何故こんなにも頻繁に大変なことが起きているんだろうか。おまけに国木田さんの書類を整理する手際の良さたるや、完全に襲撃に対する慣れを感じさせるものな上、他の事務員の方々の反応も「あぁまたか」と云ったもの。最早私の方がおかしいのではないかとさえ思えてきた。
(私が身を置く場所は、どうしてこんなに物騒な処ばかりなんだろう……)
真逆そういう運命の下にあるとでも云うのか、と悶々と考えながら昇降機で一階に下りて、外へ出る。そのまま倉庫へ向かっていると、大きな風呂敷を背負って非常階段を降りてくる敦さんと鉢合わせた。
「こんな処に居ったか、小僧。お前の所為で大わらわだ。手を貸せ、こいつを――」
国木田さんの言葉を最後まで聞かず、敦さんは何故か私たちの横を通り過ぎてしまう。すれ違いざまの表情は、何かを酷く思い詰めているように見えた。
「おい?」
国木田さんの疑問の声に足を止めた敦さんは、少し振り返る。何故か、泣き出してしまいそうな笑顔で。
「……心配いりません。これでもう、探偵社は安全です」
「……はぁ?」
頓狂な声を上げた国木田さんに答えず、敦さんはそのまま駆けだした。
「あっ、おい!」
制止の言葉に立ち止まることはなく、その背は段々と小さくなって、とうとう見えなくなってしまう。残された私と国木田さんは、ぽかんとして彼が去った道の先を見つめるしかない。
(もう安全って、どういうことなんだろう)
何が何だか判らずに首を傾げた私に、国木田さんが問いかけてくる。
「どうしたというのだ、あいつは」
「さあ……」
敦さんの謎の行動に首を捻りながらも、取り敢えず私たちは作業を再開したのだった。
288人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霜夜華(プロフ) - ミオさん» ありがとうございます!大好きと言って頂けて本当に嬉しいですヽ(*´∀`)ノ頑張って更新しますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 647614d598 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - このシリーズ、本当に大好きです。続編も楽しみに待ってますね! (2020年3月12日 7時) (レス) id: 181d62af7c (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - (^ー^)さん» 誤字ですね!すみません、修正します!ご指摘ありがとうございますー( ´ ▽ ` ) (2019年12月12日 1時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
(^ー^)(プロフ) - 広津さんが弘津さんになってます。 (2019年12月11日 23時) (レス) id: db654e8536 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年11月28日 1時