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ひとまず脅威が去って一件落着――となれば良かったのだが、残念ながらそうは問屋が卸さない。何しろ私達は、怪我をした三人を探偵社まで一刻も早く運ばなければならないのだから。
ということで、国木田さんに此処まで車で迎えに来てもらうことになったのだが、どうにもこの路地裏の前では駐車が難しいので、駐車出来る処まで私と太宰さんで彼らを運ぶことになった……のだが。
「じゃ、早苗は谷崎君と敦君お願い」
「却下です」
さり気なく太宰さんが自分だけ楽をしようとしてくるのである。本当にどうしてくれようか、この男。
「私のこの細腕に少年二人を押しつけようというのかい？」
「それは私の台詞なんですが。いくら私が鍛えているとはいっても、自分より背の高い人を二人も運ぶなんて無理です」
「大丈夫だよ早苗なら。自分を信じて！」
頑張れ頑張れ、と微妙に腹の立つ笑顔で応援してくる太宰さんを冷め切った目で見やり、私はさっさとナオミさんを背負った。
「無理なものは無理です。三人を危険な目に遭わせた罰だと思って下さい」
「それを云われると……。うーん、仕方ないね」
やれやれと云いたげな顔をした後、太宰さんは細腕と称した両腕で二人を抱えると、割としっかりとした足取りで歩き出す。それに私も続くと、
「いやあ、それにしてもいい感じに関係悪化してたねえ、君達。何かあったの？」
と、かなり余裕な様子で話しかけてきた。これのどこが細腕だというのか。
「何故そんなに嬉しそうなんですか」
「だって、ねぇ？」
にまにまと笑みを浮かべる太宰さんに、思わず深い溜息が零れた。彼は昔、「私の所為で延焼する人間関係って何か素敵」とか耳を疑うような台詞を宣っていたが、どうやらその気質は今でも変わっていないらしい。
「何かあったも何も、四年前、貴方が失踪して直ぐあの人大暴走したんです。貴方が消えたのは私の所為だ、とか叫びながら、周囲も気にせず本気で私を殺そうとした」
まるで昨日の事のように、はっきりと思い出せる。あの時の芥川の凄まじい激昂と、血を吐くような叫び声を。
「貴様の所為だ。貴様が居たが為に、太宰さんは消えたのだ！」
(……)
――多分、気の所為だったのだろうが。
私にはあの時の彼が、怒り狂いながらも、その裏で突然の喪失に泣いていたように見えた。
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霜夜華(プロフ) - 有彩さん» 遅れましてすみません！公開しました！そしてお褒め下さってありがとうございます(*^_^*) (2019年11月28日 1時) (
レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
有彩 - とても面白くい作品です！！続編が、楽しみです！何日くらいに、なるのでしょうか！ (2019年11月28日 0時) (レス) id: b0517c2008 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 細波幸近さん» ありがとうございます！のんびりですが、続きも頑張って書いていきますね！(*´ω｀*) (2019年11月16日 21時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
細波幸近(プロフ) - いつも読ませて頂いています!とても面白会です! (2019年11月16日 21時) (レス) id: a768fd0174 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼすジュースさん» ありがとうございますー！ノロノロ更新ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2019年8月5日 22時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霜夜華
| 作成日時：2019年6月10日 15時
