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その行動の意味がすぐには理解出来ず、私は間抜けにも一瞬呆けた。彼は一体、何をしているのか。
(そんな事したら、死――)
錆び付いた機械のように軋んだ思考が漸くそこまで考えた途端、ざぁっと全身から血が引く音が聞こえた気がした。
「ッどいて!!早く!!」
「早苗さっ……!?」
考えるより先に体が動き、気付けば私は敦さんを全力で爆弾から引き剥がしにかかっていた。ドッドッドッと、これ以上無いほど心臓が速く大きく痛い程脈打って、冷や汗が滲む。けれど半分剥がれた彼の下の爆弾が示した残り時間は、もう一秒もなかった。
(間に合わないっ……!)
ドクンとより大きく心臓が跳ね、咄嗟に私は敦さんごと爆弾を抱きしめた。こんな脆い人の体がどれだけ盾になれるか判らないが、それでも、これ以外に方法が思いつかなかった。
「莫迦!」
太宰さんの焦った声と、最後の電子音を聞きながら、私は死を覚悟してきつく目を閉じた。
――閉じた、のだが。
「……。………?」
いくら待っても、網膜を焦がすような白い光や、轟音や、衝撃が訪れない。一体何が起きたのか判らず、そろそろと身を起こすと、爆弾は液晶にゼロを表示したまま沈黙していた。
(これ、は?)
状況が理解出来ず、二人揃って頭に大量の疑問符を浮かべていると、太宰さん、国木田さん、そして犯人が揃って私達の前に立った。……何故か妙に呆れた表情で。
「やれやれ……。莫迦とは思っていたが、これほどとは」
「自 殺
何やら不名誉な事を云われているが、混乱し過ぎて何かを云うことすら出来ない。しかもそこに人質だった女学生が犯人に抱きつくものだから、理解不能すぎて「何コレ」という疑問以外言葉が浮かばなくなる。
そんな私達に国木田さんは溜息を吐いた。
「二人共。恨むなら太宰を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め」
「……。真逆」
パズルのピースが嵌まるように、この事件への違和感が次々に解消されていく。
軍警を呼ばなかったのも、太宰さんが私に異能を使わせなかったのも、凡て、これが自作自演だったからなのだ。道理で昨晩私達を探偵社員に推薦すると云っておきながら、「仕事を斡旋」なんて回りくどい云い方をしていた訳だ。
(と、いうことは)
彼らは最初から、この会社ぐるみの茶番に私達を巻き込む心算だったのだ。
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霜夜華(プロフ) - 有彩さん» 遅れましてすみません!公開しました!そしてお褒め下さってありがとうございます(*^_^*) (2019年11月28日 1時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
有彩 - とても面白くい作品です!!続編が、楽しみです!何日くらいに、なるのでしょうか! (2019年11月28日 0時) (レス) id: b0517c2008 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 細波幸近さん» ありがとうございます!のんびりですが、続きも頑張って書いていきますね!(*´ω`*) (2019年11月16日 21時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
細波幸近(プロフ) - いつも読ませて頂いています!とても面白会です! (2019年11月16日 21時) (レス) id: a768fd0174 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼすジュースさん» ありがとうございますー!ノロノロ更新ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年8月5日 22時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年6月10日 15時