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多少なりとも精神にダメージを受けたらしい太宰さんを物珍しい気持ちで眺めていると、国木田さんがつかつかと大股で歩きつつ叱責を飛ばす。

「この非常事態に何をとろとろ歩いて居るのだ!疾く来い!」
「朝から元気だなあ。あんまり怒鳴ると、悪い体内物質が分泌されて、そのうち痔にかかるよ」
「何、本当か!?」

(いや何故痔……。しかも何故信じる)

立ち直りが早い太宰さんの法螺を真に受けた挙句、律儀にメモまで取り始めた国木田さんを、私は微妙な心境で見つめた。
あの人、あんなに根が素直で大丈夫なんだろうか。その内詐欺とかに引っかかってしまわないだろうか。非常に将来が心配すぎるのだが。

「あれ、嘘ですよね……?」
「だと思うけど」

ひそ、と確認してきた敦さんも、何とも云えない目で茶番を繰り広げる大人二人を見つめている。残念ながら人間は、二十歳を過ぎたからといって、所謂「大人」に変われる訳では無いらしい。今物凄くそれが判った。

二人して冷めた目で見守っていると、嘘であることを明かした太宰さんに国木田さんが怒涛の制裁を与え始めて、ますます呆れが募っていく。
周りの目など一切気にしていない其れに、大人というものへのイメージだとか期待だとかが(ことごと)く破壊されていくのだが、これは果たして良い事なのか悪い事なのか。何だかもう、非常に複雑極まりない。

(これ、通報されたりしないかな)

道行く人が二人に向ける引いた視線を気にしつつ、遂には太宰さんの肩を外そうとし始めた国木田さんを眺めていると、敦さんがおずおずと声をかけた。

「あの……『非常事態』って?」

脱線しすぎて忘れられていた本題を持ち出されて、漸く国木田さんは我に返ったらしい。バッと太宰さんを離すと焦った声を上げる。

「そうだった!探偵社に来い!人手が要る!」
「何で?」

肩を擦りながら太宰さんが尋ねると、国木田さんははぐっと眉間に皺を寄せ、重々しい声で告げた。

「爆弾魔が――人質連れて探偵社に立て篭った!」

(いや何故それを忘れるの)

予想外過ぎる非常事態に物凄くそう突っ込みたかったのだが、残念ながらそれは太宰さん達が駆け出した所為で口にすることは叶わなかった。

6.事件という名の……→←5-4



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霜夜華(プロフ) - 有彩さん» 遅れましてすみません!公開しました!そしてお褒め下さってありがとうございます(*^_^*) (2019年11月28日 1時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
有彩 - とても面白くい作品です!!続編が、楽しみです!何日くらいに、なるのでしょうか! (2019年11月28日 0時) (レス) id: b0517c2008 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 細波幸近さん» ありがとうございます!のんびりですが、続きも頑張って書いていきますね!(*´ω`*) (2019年11月16日 21時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
細波幸近(プロフ) - いつも読ませて頂いています!とても面白会です! (2019年11月16日 21時) (レス) id: a768fd0174 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼすジュースさん» ありがとうございますー!ノロノロ更新ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年8月5日 22時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年6月10日 15時

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