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4.問いかけと社員推薦 ページ16

意識のない中島さんが太宰さんに倒れ込んだのを見て、漸く一段落付いたと私は軽く息を吐いた。

だが、すっかり荒れてしまった倉庫内の後処理は一体どうするのか。それからこういうのは器物損壊の罪に問われてしまったりしないのだろうか。
そう考えたところではたと気付く。

(考えてみれば、抑も中島さんが変身している間に無効化すれば良かったのでは……?)

少なくとも変身中は隙があった上、太宰さん自身、中島さんが虎であることは確信していたのだ。であれば、わざわざ虎になるのを待つ必要など無かった筈で、そうしていれば倉庫がこんなことになることもなかった。

(否、抑もこれ、私必要なかったのでは)

それだというのに、何故彼はわざわざ私を巻き込んだのか。正直余り考えたくないのだが、もしや、何か別の目的があるというのか。そんな疑念を込めた目を向けた瞬間。

「男と抱き合う趣味はない」

と、突然太宰さんが中島さんを支えていた手を離してしまった。可哀想に、ビタンッと痛々しい音を立てて中島さんは床に倒れてしまう。はっきり云って、今のはかなり非道い。

思わず無言で非難の念を込めた視線を向けるが、気付いている筈なのにあっさり無視した太宰さんは、何事も無かったかのように笑顔で私を振り返った。

「お疲れ様、早苗。協力してくれて助かったよ」

却説、とそこで一区切り入れ、太宰さんは真っ直ぐ私を見据える。凡てを見通すかのような仙人じみた瞳は、まるで引力があるかのように私の目を捕えて離さず、私は無意識に軽く息を詰まらせた。

「国木田君が来るまでの間、一寸話をしようか」
「……」

妖艶な笑みと悪戯めいた光を宿した瞳を見て、ああ矢張りと私は諦め半分に思い知る。矢張り彼は最初から、虎退治以外の目的で私を巻き込んだのだ。
そして、そうまでして私と話したいことなど、思いつく限り一つしか存在しない。

何となく次の言葉を予想しながら内心身構えていると、彼は笑みを作ったまま口を開いた。

「何故『処刑人』の君が一人で外をほっつき歩いているのか。是非とも理由を聞かせてほしいねえ」
 

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霜夜華(プロフ) - 有彩さん» 遅れましてすみません!公開しました!そしてお褒め下さってありがとうございます(*^_^*) (2019年11月28日 1時) (レス) id: 64f91c64f2 (このIDを非表示/違反報告)
有彩 - とても面白くい作品です!!続編が、楽しみです!何日くらいに、なるのでしょうか! (2019年11月28日 0時) (レス) id: b0517c2008 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - 細波幸近さん» ありがとうございます!のんびりですが、続きも頑張って書いていきますね!(*´ω`*) (2019年11月16日 21時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)
細波幸近(プロフ) - いつも読ませて頂いています!とても面白会です! (2019年11月16日 21時) (レス) id: a768fd0174 (このIDを非表示/違反報告)
霜夜華(プロフ) - かぼすジュースさん» ありがとうございますー!ノロノロ更新ですが、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年8月5日 22時) (レス) id: fee3f25fa7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜夜華 | 作成日時:2019年6月10日 15時

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