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回復効果 ページ7

「クククその無駄な巨体が珍しく火ィ噴いてんな」

部長がオールを動かしながら言った。

私たちは今、舟で川を上っている最中だ。

殆どは、大樹が舟を引っ張っているお陰で上れている。

「ギリギリセーフだ!高さがな!

体力は全くギリギリじゃないぞ!安心しろ!」

しかし顔を見ていても、結構耐えている様子だ。

「無理しないでね……」大樹がそれで溺れたら、私たちは同時に川に流されるだろう。それは実に困る。

「無理じゃないぞ!大丈夫だ!」

「そっか……。まあ頑張って……。」

そう、大樹にこの手の事を言っても無駄なのだ。大丈夫だと言うなら大丈夫だろう。

「ん?杠、足に何かついてない?」

よく見ると杠の足の指先には、まだ石化が残っていた。

「あ、これ……」

杠はぎこちなく呟く。

「邪魔っちゃ邪魔なんだけど、まあいいかなって…」

それを聞いていた大樹は杠に呼び掛ける。

「よくないぞ!着いたら復活液で治してやるからな!」

そう言って、速く進まんとばかりに、大樹は舟を引っ張る速度を上げた。


日が少し傾いた頃に、私たちは舟を降りた。

そこで大樹は杠の足に、復活液を十分にかけてやる。

「冷た!って、なんか痛くなってたのまでひいてく……」

「おおっ!復活液には疲労回復効果もあるのか!?」

それを部長は否定した。

「ねぇよそんなもん。

石化が戻る時、細けぇ破損は繋がるっつうだけの話だ。

俺らもちょい顔割れてんのに生きてんじゃねぇか」

なるほど、石化は悪い事だけではないということか。

「って、え?私、顔、割れてる?」

急に湧いた疑問に、大樹、部長、杠はうんうんと頷いた。

杠が自分の目の下を指して言った。

「ほらここの、Aちゃんから見て右?側にシュって縦に割れてるよ」

言われたところをなぞってみる。確かにそこにあるのは割れ目だった。

「顔洗ってるときに気づかねえのかよ」

呆れたように言われる。

「いや、こんなの言われないと気づかないよ…」

私の主張を無視して、部長は荷物を持ち直す。

「ほれ、とっととゴール行くぞ!疲労回復液につかりたきゃな」

「えっ?もしかして!箱根のゴールって!」

「おお!」

「お、温泉……」

ゴールは温泉だ。憧れの湯治を思って、軽くなった脚を前に進めた。

ごめんなさい→←大仏



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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時

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