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大仏 ページ6

木に囲まれる中で、中央に鎮座していたのは、大きな大仏だった。

他にはない、場違いな荘厳さを醸し出している。

銅、というか青銅だった。部長は大仏を仰ぎ見て言った。

「……わかったぞ、現在地は北緯35度19分、東経139度32分だ!」

私はそれに目を丸くする。

「なんで分かるの?」

「あ?この大仏が、超絶座標のキリがよかったっつうことが謎だったからな」

それで覚えていたのか。

いつもこういうところには驚かされるなと、深く頷く。

「………杠?」

私は杠の目から、涙が零れているのに気づいた。

「なっ!ど、どうした杠!!誰だ泣かせたのは!俺かァ!?」

あたふたする大樹に、杠は首を振る。

「な、泣いてない!あ、いや、泣いてなくはないんだけど…」

杠は目線を下げてうなだれた。

「違うんだよ大樹くん……。私…まだ今日起きたばっかで、なんか全然現実感ないっていうか……。

でもこの鎌倉の大仏様見たら………。ホントに日本だったんだなあって、

ホントに何千年もたっちゃったんだなあって」

私は言葉を失う。

杠は確かに今日起きたばかりで、何が何だかの状態でここまで来て、現実を見せられているのだ。

「その、お母さんや……お父さんや………みんなのこととか急に……」

「………………、」

「ククク心配するこたぁねぇ。今から俺らで司に勝って、全人類助けんだからな」

部長は腰に手を当ててそう言った。

「そうだぞ杠!大仏が道を教えてくれたしな!」

大樹は大仏を指差す。

「何千年も腐らず無事だとは!さすが神様!仏様か?

まぁとにかく!そういうのじゃないか!ハッハッハッハ!」

「あっ、大仏は青銅だから……科学的に腐らない……腐食しないんだ」

私が説明すると、大樹は口を真一文字にした。

「み、見ろ!大仏の周りだけ緑が全く生えてない!俺たちが見つけやすいようにしてくれてたみたいじゃないか!」

「いやまぁ銅イオンがダダ漏れだからな。大抵の植物には毒だっつうだけだが」

連携プレーの如く今度は部長が説明を入れる。

部長は閃いたように、ポンと手を叩いた。

「そうだ青銅!鏡に使えんじゃねぇか!!

ゴミ六分儀の精度が上がるぞ!ありがたくいただいてくか!」

「よせェ!バチ当たりな奴めェ!」大樹は部長を止めんと、部長の元へ駆け寄る。

「…………」

隣を見ると、杠が二人を遠目から見て、笑っていた。

それは、一つの暖かい景色だった。

旅はまだ、終わらない。

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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時

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