女 ページ49
(いやまあ、別にバレて危ないのは私じゃなくて部長なんだけど)
私はふっと息を漏らす。
…もし部長が生きているのがバレたらどうしよう。どうなるだろうか。
まず部長は殺される。多分私も。
女でも、司は殺すのだろうか?
私達に協力している、あの村はどうなるのか?
杠や、大樹は?
……ああ、頭が痛くなる。
そんなの考えても無駄かと、辺りをぐるりと見渡した。私をお構い無しに、風が森を通り抜けていく。
「…あ、ツユクサだ。それもかなり大きい…」優しい紫色が、ひっそりとした佇まいでそこにいた。昔は道端にこればかりが生えていたが、今は他の植物が目立ちすぎて、あまり見なくなった。
少し観察しようかなという考えが頭をよぎったが、私は散歩に来たので歩かなければならない。未練たらしく見とれながらもそこを通り過ぎた。
通り過ぎようとした。
ツユクサが生えているすぐ隣の茂み。
その中に鎮座している、どこにでもある石像が、目に入ってしまった。
女の、石像━━━。
その石像の特徴、
顔と、
表情と、
全てが、私の記憶の影と結び付いた━━。
「ひっ……!」
途端に、辺りの酸素が消えてしまったように、息が苦しくなった。身体中が強張ったように動かない。
私は腰を抜かし、すとんとお尻をついてしまう。どうしても、力が入らなかった。
何で……と、私の心の中で漠然とした声を発した。
生まれたときから知っている顔。
目が見えなかったときも、この女の姿かたちが鮮明に思い出せる。
それほどに、憎らしい女だった。どうしてこんな奴と顔が似ているんだろうと、いつも恨んでいた。
何でここに、この女が……。
私は吐き気を抑えながらも、何とか立ち上がった。
それは私の、母の石像だった。
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時