熱が ページ48
「ん??何何何??」
私はたくさんのクエスチョンマークを頭に浮かべる。さっきから部長は謎な事ばかりするな……。
部長はそっぽを向いて、頭を掻いた。ぼそぼそと呟く。
「いや、そういうのは……心配するもんじゃ……ねえのか……」
「…心配?何を心配するの?」私は間髪入れずに尋ねた。大して大きな声で言った訳ではないのに、私の声で、部長の肩がびくりと跳ねる。
「……いや…何でもねえ。忘れろ…」
何なんだ……。むしろこっちに心配になってきた。
「?それならいいけど……言ってくれないと、分からないからね…?」
幼子を慰めるように私は、穏やかに言った。
手櫛で髪をとかしながら、倉庫の扉を開放する。
「ん、クロムだ。おはよう」クロムが、梯子の下に立っているのを見つけた。
……まさかずっと待っていたのではあるまいなとは思ったものの、相手はクロムなので、全く気にならなかった。
にこりと笑いかけると、クロムはうきうきとした表情で、
「おうもう今日だぜ!!昨日言ってた"こうせいぶっしつ"って奴を早く教えてくれ!!」
と言いながら、倉庫に上ってきた。
「おう千空もいんじゃねえか。
…ってかおい、千空、顔がスゲー赤えぞ…!熱があんのか!?」
なぬ、部長が熱?
もしやさっきの心配してくれないのか、というのはこの事だったのか?
「ねえよバカ!!こっち来んな!」
後ろでわーわーと騒がしい。クロムがべたべたと部長の顔を触っているのが面白かった。
「だ・か・ら、触んじゃねえ!殺すぞ!!」
「待てよ千空!ルリみてえなヤベー病気かもしんねえぞ!」
この狭い空間で追いかけっこをしている二人を尻目に、私は倉庫を後にした。
外は思っていたより日が昇っておらず、空気はひんやりとしている。
私は歩きながら、その空気をたくさん吸い込んだ。青葉の香りと、土の匂いを感じ取る。
そしてゆっくり吐く。身体の底まで、空気を行き渡らせる。何度も繰り返すと、自然と一体になれた気がするのだ。
「やっぱり空気が綺麗だなー…。ストーンワールドも、なかなか悪くないかもね」
森の中は、鬱蒼と草木が生い茂っていた。
風が吹いて、葉のざわめきが心地よいくらいに響いていた。
「……って、私こんなにふらふらしてていいのかな……」
司の事を思い出す。
よく考えてみると、私は喧嘩別れ中という嘘を司に押し付けているのだ。
司が不審がって、司の仲間に私を見張らせているかもしれない。
誰か聞き耳を立てているかもしれない。
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時