就寝前 ページ44
「ここに?」クロムはまだ分からないようだった。私と部長は、自分の頭を指差す。
「そう、ここに」
「そして、テメーのここにもだ」部長はそう言って、クロムに拳を差し出す。「違うかよ?」
部長の問いに、その意味が分かったクロムは胸を張って「おう違わねーよ!」と威勢よく答えた。
「決まってんじゃねーか!千空!A!俺も一緒に科学の国を興す!そしてルリの病気ブッ倒してやるぜ!」
「おおー。信頼できる仲間が増えたね!」
私が小さく拍手をすると、クロムはへへんとする。
「教えろよ!さっき言ってたじゃねーか!ルリを救う科学の手があるってよ!」
「ああ、作るんだよ」部長は楽しそうに笑った。「科学の万能薬、抗生物質をな」
「おう何だその"こうせいぶっしつ"はよ!?どうやって作んだ!?千空!?」
「…おう!?」
部長はどこか決め台詞のように言ってこの場を閉めるつもりだったのだろう。しかしクロムがてんやわんやと矢のように質問を投げてくるので、絶妙に顔をしかめている。
「それでルリは治んのか!?今すぐ作れるか!?どのくらい…」
「あー!クロム!その続きは明日してやっから、今日はとっとと寝やがれ」
「だから言い方……」
あまりにばっさりと部長が切ってしまうので、大丈夫だろうかと心配になったが、クロムは意外にもすんなり納得したようで「おう待ってんぜ、ちゃんと明日話してくれよ!」とだけ言い残して、梯子から下りていった。
それを見送り、クロムってどこで寝ているんだろう?と思いながら、ん、と私は新たな疑問に臥した。
私はどこで寝るんだろう?
隣の方は「寝るか」と身体を伸ばしながらぶつぶつと粒やいている。
「あの、私はどこで寝れば?」そう訊くと、部長はゆっくりこちらを見る。何て事はないようなふうに言う。
「あ?ここで寝ねえのか?」
「え?」私は思わず聞き返した。
「だから、ここで」
「ここで?私だけ?」
「いや俺も寝るわ」
「え、何。つまり部長と同じ屋根の下ですか」
「そういうこった」
部長はさっさと言ってから、外に寝袋が入った荷物を取りに出た。
私も倣って倉庫を下りる。
灯りは中にしかないので、外は相変わらずの暗闇だ。
「ん」
何も見えない暗さの中、短く部長の声が聞こえた。鞄をこちらに渡してくれたのだろう。
「ありがとう」鞄を受け取る。少し触れた手が暖かい。
「…あ゛あ」
不器用に答えた部長が何を考えていたかなんて、私には知る由もなかった。
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時