倉庫の中で ページ42
「おお、もうそんな難しい漢字が読めるのか」
父の声が高くなる。
一昨日遊んだ少年が、あまりに難しい言葉を使うので、Aも負けじと家にある活字を漢字辞典を引っ張りながら読み漁っていたのだった。少しの漢字は、不慣れながら読めるようになった。
…確かその少年の名は、千空と言ったか。
「身の回りの植物とかもな、それで調べてみると、面白いぞ。俺もよく使っていたんだ」
父も、使っていた。
それを聞いたAの顔が、ぱっと明るくなる。
子供にとって、大人が使うものを使えるのは、とても嬉しいことなのだ。
「いいの?ありがと!」
Aは父の方を見る。もう三十路を過ぎた父の顔は、とても父親らしい。
「これがあれば私、はかせになれるね!」
「……なれるさ。立派な、博士にな」
その父が、━━━━━だとは、思っていなかった。
******* *
「ん?おかえりー」倉庫の扉が開く音が聞こえたので、そこに向かって呼び掛けた。帰って来たのはやはり部長とクロム。
「おう。って、テメーずっとここにいたのか」
「そうだよ。いつの間に二人ともどこかへ行っちゃったからね。
……ていうかクロム!植物まで集めてるの!すごいね!!」
突然私が叫ぶので、クロムが大きく仰け反る。
「うおう!?」私は構わず続ける。
「ほらセンブリ!スイカズラ!カンゾウ!他にもたくさん!」
「分かったから!落ち着け!」
「あ?全部漢方か?今言ったのは」
「え?」
部長の発言により、私の問い詰めは停止する。
漢方?
センブリ、スイカズラ、マオウ、カンゾウ。
「あっ。確かに漢方だ」
これは大きな失態だ。植物学者もどきが漢方てあるという共通点に気付けないなんて。
「ん、漢方は漢方でも、咳止めみたいなのが多いね」
風邪に効きそうなもの、喉の痛みに効くとか、そんなものが多い。
私が指摘すると、クロムは黙り込んだ。
「おう……俺の体で試してイケてた奴だけ貯めてんだよ。ルリの病気が治んなら、なんだって集めやる。
俺はその為に妖術使いになったんだ」
ルリとはコハクの姉の事だろうか。
「………?ルリさんは、呼吸系の病気なのかな?」
「多分そうだ。ひどく咳してるからな」
喘息持ちなどかと思ったが、もっと大事のようだ。
「千空!A!ルリの奴を救う妖術…カガクはねえのか!」クロムは必死に訴えかける。しかし部長の答えは曖昧だ。
「モノによっちゃあ手はあんだ。ただこのストーンワールドじゃあな……」
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時