モテないならどうする? ページ33
かっこ悪い部長は何とか水瓶から脱出し、水瓶を立て直した。しかし湯も同時に水瓶から脱出したので、もう一度汲み直す事になった。
「あ゛ーどうすっか……」
顔をしかめながら、部長はコハクが入れ直した水瓶を眺めている。
「何をどうするって?」私は訊く。
「これをどうにかして楽に運びてぇ。
50リットルなんざ運ぶ距離が短くたって長くたって、死ぬほどめんどくせぇことにゃ変わりねぇからな」
そこまでして50リットルを運んでやりたいと思えるのもすごいなぁと思いつつ、考えた。
「あれは?滑車を車輪に使って」私は提案をした。滑車も丁度いいお荷物なので、どうにか使えないだろうか。
「テメーは自転車でも作ろうってか?滑車は二つしか作ってねえんだぞ……」部長は呆れたように肩を落とす。
滑車二つ、つまり二輪じゃ水瓶は運べないと。なんだか馬鹿にされたような……。
うーんともう少し頭を捻らせてから、言った。
「じゃあ、こうするのは?」
******* *
「いやー!楽だぞこれは!」
「楽か?それ……」
部長の横で、ニコニコしながら手押し車を押しているコハク。滑車は意外と大きいので、荒れたところでも安定して走っている。
そう、私が提案したのは、農作業などで見かける手押し車、いわゆる"猫車"の二輪車版である。
部長は何か四輪車のようなものを想像していたのかもしれないが、50キロを手で持ち上げるよりははるかにましであるので、結果オーライといったところか。
「台車になると超絶軽々しく運ぶじゃねえか……流石雌ライオンだな」
「め、雌ライオンではない!」元気よく、コハクが叫ぶ。
「……まったく、それにしても君達は、何とも面白い事をするな」
「面白い事?」
そのまま返すと、コハクは「ああそうだ」、と台車を掴む手を強めた。
「このような便利なものを作れるとは。私では思い付くことすらできない」
それに私は、口を噤んだ。
別にこれは、私達が思い付いた事ではない。
科学という、言ってみれば先人達の知恵袋の集まりを頭に入れているだけだ。
何だか私達の手柄のようになっているのが申し訳ないような気もする。
「一体君達は何者なのだ?」
コハクが言った時、丁度森を抜けた。見晴らしがよくなる。
「…………!」
そこには大きな湖が、光に反射してきらきらと輝いていた。
湖の奥には、たくさんの山々が霞んでいて、湖の手前には二つの島が、"橋"で繋がれていた。
「ハ!ついたぞ!ようこそ、私の村へ」
憶測?臆測?どっちなのこれ?→←50リットルはモテませんでした
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長庚 - ぽぽぽさん» お言葉物凄く支えになります、更新頑張らせていただきます! (10月6日 16時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - うおおおおおお!更新頻度高くてすごい助かります!!普通に話作るのうますぎて吐きそう!!頑張れええ!! (10月6日 0時) (レス) @page39 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - ありがとうございますー!実は風邪ひいてしまってですね……体調には気をつけます!(*`・ω・)ゞ (10月2日 19時) (レス) id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽぽ(プロフ) - んふふふふふふ。何これ面白い…可愛い…。体調に気をつけて更新頑張ってください! (10月2日 17時) (レス) @page33 id: 84325108d2 (このIDを非表示/違反報告)
長庚 - マジモンの名無しさん» ありがとうございます!これからも作品の腕を上げて参ります! (9月28日 21時) (レス) @page29 id: 02c9f82314 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:長庚 | 作成日時:2023年9月12日 22時